タンクに漬けられる梅酒の実
タンクに漬けられる梅酒の実

故今道仙次元市長の提案原点

京都府随一の梅どころ城陽市の青谷。中でも大梅品種の「城州白」(じょうしゅうはく)は、城陽の地にしか根づかない不思議な品種。全体の粒が多きい上、種が小さいことから果肉が厚い。その城州白を使って「梅酒」を製造している日本で唯一のメーカーが、京都府南部唯一の造り酒屋「城陽酒造」(島本稔大社長・城陽市奈島)。今年も、10㌧の「城州白」を仕入れ、連日タンクに仕込んでいる。

創業1895年(明治28年)の「城陽酒造」は、「人・米・水」を地元にこだわっての酒造りを続けている。日本酒の売り上げが全国的に年々落ち込んでいる中、「何も足さない、何も引かない」本物志向を背景にここ10年でほぼ2倍の生産増を誇り、注目を集めている。
その城陽酒造が、「梅酒」造りを始めたきっかけは、城陽市が誇る傑出した政治リーダー故今道仙次元市長(1977~1997年)の提案。90年当時、「清酒造りのノウハウと城陽特産の城州白を生かし、梅酒造りに挑戦してみては」と背中を押された、翌91年6月にリキュール酒の免許を取得、製造を始めた。
しかし、当時まだ「梅酒」は、家庭で漬けるものだった。漬けて1年で売る計画が、3年経ってようやく売れたのだが、これがまた「コクがあってまろやか」と大評判に。96年度には、農林水産省と経済産業省が共同して、全国から公募した「農商工連携88選」に京都府内で唯一、5年ものの梅酒「青谷の梅」が選ばれ、以降は毎年順調に売り上げを伸ばしてきた。
ここ3年間は、城州白10㌧を仕入れ、50度のホワイトリカーと液糖に漬け、25㌧の梅酒を製造している。今年の梅の出来具合について島本社長(46)は「実の大きさといい、熟度といい理想的な状態」と大満足。3年間、タンク内で熟成させ、水と糖分で割りアルコール度16度まで下げ、飲みやすくした「花小枝」、さらに12度に下げ飲みやすくした「梅小枝」、通に大人気の「梅酒原酒」の3種が市販されている。
実のところ、城陽酒造でも販売されていないまぼろしの梅酒がある。7年ものの「青谷の梅貴塾(きじゅく)原酒」。京都、大阪、関東など37店舗のみの限定販売だ。「売れなかった時期、積極的に応援していただいた酒屋さんへの感謝の気持ちを忘れないよう」限定にこだわり続けている。儲けるためなら何でもする、最近の企業風潮とは無縁の企業倫理がしっかり生きている。【藤本博】