命の尊さ、次世代へ/宇治田原で「キジ」放鳥
キジを抱きかかえる小学生ら

親鳥の育児放棄によって放置されていた卵をかえし、飛べるまでに育てたキジを野生に返そうと、宇治田原町は13日、くつわ池自然公園(郷之口末山)で放鳥を行った。町内の小学生らの手によって放たれた鳥たちは、これまで育ててもらった恩を胸に抱え、大きな羽をばたつかせながら緑豊かな森へと帰り、子供たちも命の大切さを胸に刻んだ。
キジは日本の国鳥。繁殖期になると雄はハート形の赤い顔になり、「ケーンケーン」と鳴きながら雌を求める。5月は鳥類にとって繁殖の時期となるため、日本では「見守っていてください」という意味も込め、5月10日からの一週間を愛鳥週間としている。

保護直後の状況(5月18日)

ちょうどその時期に産んだと思われる9つの卵を、今年の5月18日、くつわ池自然公園で管理人がパトロール中に発見した。野鳥が戻ってくるかと思い、少し待ったが帰って来なかったという。
発泡スチロールの箱に卵を入れてカイロなどで温めていたが、鳥は世話が難しいため役場に連絡。町で保護することになった。何の卵か分からないまま、ペットボトルに湯を入れてタオルで巻き、親鳥が抱きかかえるような格好にして温めたところ、見事9つすべてふ化に成功した。
産業観光課の衣川信哉主任(41)が「連れて帰って飼います」と名乗り出たため、鳥獣保護法に基づき町からの許可を受け、実費で育てることに。最初は9羽すべてを育てていたが、その後、一緒に飼うことが難しくなったため、木原浩一課長(57)が5羽を預かることになり、さらに9羽すべて飼育することとなり、約半年間愛情を込めて育てた。やがてキジの雄7羽、雌2羽と分かるまでに成長した。
キジのためを思い、心を鬼にした木原課長はこのたび野生に返そうと決心。「もともと自然界にいたものなので、自然の中で育ってくれれば…。毎日エサやりが楽しかったので寂しい」との思いを口にした。
この日、命の大切さを学んでもらおうと、田原小学校の児童会役員5人と宇治田原小学校の同6人が立ち会った。このほか、西谷信夫町長や山城広域振興局の岡本圭司局長が出席したほか、野鳥の会や郷之口生産森林組合のメンバーも見守った。
西谷町長が「命を大切に育もうと、職員が家族ぐるみで育ててきた。自然に返すことで、新しい命が育まれることを願います」と児童らに語った。
岡本局長は「キジは本来自然のもの。皆さんの手で放していただきたい。自然を大切に、心を大切に、そういう心を持ってください」と呼び掛けた。
児童らは木原課長や衣川主任から大きく育ったキジを受け取り、まるで宝物を触るかのように抱きかかえた。一斉に9羽を手放したところ、キジは公園内を歩き回るなどして遊んでいた。しばらくすると森の中に入っていった。
宇治田原小6年生で児童会長の青山昊平くん(11)は「心臓の動きや毛のフサフサが手を通して伝わってきた。自分で獲物をとって、たくましく暮らしてほしい」と話した。