【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
フィールド最盛期を迎え、川通いで手足の生傷が絶えないナチュラリスト、早朝から夜間まで、日々元気に走り回っています。
ケリの繁殖調査も一段落の野鳥調査では、今年も京都府希少野生生物に指定のタマシギとコアジサシの生息確認に、主な夏鳥たちの繁殖状況の把握を目的としたフィールド調査と聴き取り調査で情報の収集に勤めています。昨年の5月、城陽生きもの調査隊のくぬぎ村の監視カメラに世界的な大珍鳥・ミゾゴイが何度か映っていたことから今年の最重要課題に挙げていましたが、繁殖確認どころか古巣調査に鳴き声の聴き取り調査もまったく成果なく、ついぞ監視カメラにも映ることはありませんでした。
そして、現在メインとする和束町の野生生物生息調査では、月に10日間、週に2、3回の集中調査で、こちらは鳥類から水棲生物までほぼ思い通りの成果が得られ、新版の鳥類目録・野生生物生息リストも監修を経て公表のときを待つばかりです。今年度の京都環境フェスティバルで、これらの調査結果と概要を発表し、「和束町鳥類目録&野生生物生息リスト2019」のダイジェスト版の資料配布を予定しています。
地元・城陽市に宇治田原町、南山城村。古くは巨椋池干拓田に京阪奈丘陵に木津川フィールドと、それぞれに於いて幸運な発見で郷土のシンボルとなる生き物を記録してきたナチュラリストにとって、最後のお勤めの地・和束町でも名を遺す希少生物の新発見を夢見ています。ささりとて、絶滅種・コガタノゲンゴロウさえ二番煎じでは、もはや幻の怪蛇・ツチノコぐらいしか思い当たりません。2年前には白いカラスが確認された和束町、神の使徒と崇められる白蛇や白鹿など、せめてアルビノと呼ばれる先天的な突然変異の生き物たちの出現にも期待したいところです。
実は秘かに、南山城地方では公式な記録のない絶滅危惧種の淡水魚・スナヤツメの発見に挑むべく和束川に罠を仕掛け、潜水にてその姿を追い求めていましたが、中耳炎で10日間の潜水禁止勧告の憂き目です。有言実行のナチュラリスト、日本一の大スッポンの記録奪回!に珍蛇・シロマダラの生息宣言!等々、当紙面で公言してきた夢や自説が報われた事例の続編を信じて再チャレンジへカウントダウンの最中です。
今回、当連載でも多くの野鳥写真を提供頂いている山中十郎さんから、城陽環境パートナーシップ会議に資料写真進呈の申し出があり、6月29日の総会後のミニフォーラムで野鳥解説と撮影のエピソードなどのお話を伺う機会を得ています。写真のデータは実に8628枚、370種類を数える野鳥の記録は、京都府の鳥類目録全種を網羅する大変貴重なものです。PS会議事務局と脇坂英弥君たち鳥類調査班のメンバーで管理と活用を図り、城陽市の新版・鳥類目録に和束町鳥類目録2019の他、京都府のレッドリスト記載種など、郷土資料ごとの写真編纂と解説に取りかかります。
雑多な自身の活動報告はさておき、生態写真にして芸術作品でもある山中十郎さんの野鳥写真を共に楽しむ機会としています。これからも、随時紹介して参ります。無粋な解説もいらない秀作の数々をご覧ください。

◎山中十郎写真集

ナチュラリストの活動母体・城陽環境パートナーシップ会議の令和元年度総会は、6月29日に福祉センターで開催され、恒例のミニフォーラムでは部会の活動報告が行われました。運営委員の小林駿さん(写真①左2)と共に、アドバイザーの脇坂英弥君と山中十郎さんが登壇しました。(写真②)
今回、山中さんがこれまでに撮影された370種類もの野鳥写真から、南山城地方にゆかりのある20種類を厳選し、鳥類学者の脇坂英弥君(同左)の解説をおり交ぜながら、ネィチャーカメラマンの魅惑の世界を堪能することができました。とかく野鳥カメラマンといえど、マナー違反で保護とは相反する結果を招く撮影が取りざたされてもいますが、山中さんの写真は野鳥の生活に影響が及ばない撮影法で自然の姿・営みを記録された胸を張って公表できる作品群です。
撮影の苦労と喜び、様々なエピソードを聴けたことで、フォーラム参加者たちも一枚の野鳥写真に込められたメッセージを受け止められたことでしょう。紙上再現の野鳥讃歌、山中十郎・フォトギャラリーをお楽しみ下さい。

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