山崎佳代子さんが受賞/第29回紫式部文学賞
紫式部文学賞に輝いた山崎佳代子さん

宇治市は3日、第29回紫式部文学賞の受賞作品に翻訳家の山崎佳代子さん(62)のノンフィクション「パンと野いちご・戦火のセルビア、食物の記憶」(勁草書房、2018年)を選んだ、と発表した。市民文化賞には早北千枝さん(72)の小説「よそになる身の 秀能物語」、𠮷水秀樹さん(60)の法話集「ダニヤ経」が選ばれた。贈呈式は11月9日(土)に源氏物語ミュージアムで行う。

■ノンフィクション「パンと野いちご」

受賞作品「パンと野いちご」

文学賞に輝いた「パンと野いちご」は、1991年から約10年間続いた旧ユーゴスラビアの内戦の模様を、体験者への詳しい聞き取りを通して描いた力作。戦争で難民となった人たちの「食物」に焦点を当てながら、命をつないだ人々の証言が生々しく記述されている。
作者の山崎さん(ベオグラード在住)は「私の住むバルカン半島は世界の火薬庫と呼ばれ、戦の絶えぬ土地です。過酷な歴史に翻弄される無名の人々との出会いが、私の文学の出発点でした…身に余るご褒美に心を引き締め、日本語の織物を織り続けようと思います」と受賞のコメントを寄せた。
選考委員会の鈴木貞美委員長(国際日本文化研究センター名誉教授)は「審査員の満場一致で決まった。普通のジャーナリストや大学教授では書けない出色の出来。現地で生活し、誰とでも心が通じ合い話し合える山崎さんならではの作品だ」と絶賛した。
山崎さんは1956年生まれ、静岡市育ちで、北海道大学露文科を卒業。サラエボ大留学を経て25歳でベオグラードに移住し、40歳から10年間、難民支援団体で活動した。詩集「みをはやみ」(2010年)、エッセイ集「ベオグラード日誌」(2014年)などを出版。2015年には読売文学賞を受賞している。
紫式部文学賞は、宇治市が「源氏物語」宇治十帖の主要舞台であることから、市民文化の向上や女性文学の発展を目指して1991年に開始。毎年、前年に発表された小説や戯曲、評論、詩歌、随筆などから受賞作を選んでいる。今回は67点から選考。ノンフィクション作品の受賞は初めて。