【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
よもやのケガで多くの方々にご迷惑をかけた「ブラックセプテンバー」が明け、10月の青空とフィールドは、傷心のナチュラリストを元気づける相次ぐ朗報で超多忙なハッピーライフを送っています。
9月17日に木津川で釘のような尖った物を踏み抜き、毎度のケガと軽く考えていたら、その夜に高熱が出て血圧も200超えで2週間の入院勧告を受けました。仕事もさながら、講演や自然観察会などナチュラリストの本分とする責務を果たすことができず、何よりフィールド最盛期にベッドに拘束されたもどかしい入院生活は、想像以上のストレスとなって、デスクワークどころか本や新聞・テレビも見る気力さえ失くしていました。
本来、楽天家の筆者も、9月だけで眼のレーザー治療に循環器科のカテーテル手術、骨折を免れた接骨院療養に、歯医者通いの末のケガにはさすがに凹みました。そんな折、夢枕に立った恩師からの優しい言葉に救われて、心の平安を取り戻せた経緯がありました。天から見守られていることを実感したナチュラリストの活動再開は、エコキッズたちの笑顔に迎えられての至極のときを過ごし、フィールド探査にもがぜん弾みがつきました。
果たして、スッポン漁師の「川仕舞い」では、大物ウナギをゲットし、希少種を含む多くの淡水魚の生息も確認し、魚類リストの改訂版作成に意気込んでいます。ここまで不調だった野鳥調査や爬虫類分野でも、秋の渡り鳥の記録や珍蛇の発見など、嬉しい情報が相次いで届けられ益々テンションも上がりました。
10月26日に報告会が開催された「和束町・野生生物生息調査」の中間発表でも、哺乳類から淡水魚までの脊椎動物部門の生息リスト・ダイジェスト版を公表し、「和束町鳥類目録2019」の原版とA4版の野鳥写真134種類を披露して好評を博しています。何はともあれ、責任を果たせたことに安堵し、年末の「京都環境フェスティバル」での本番に向けて今一度の資料見直しとフィールド探査を楽しんでいます。
また、木津川への放流の時期を逃すことになった岐阜大学で繁殖実験に貢献してくれたスッポンたちも、結果的には日本最大級のスッポンが生息していることで知られる名古屋市の川原神社の池に奉納して厄災祓いとなるハッピーエンドを迎えています。
ツキが替わった厄明けの10月、雑多な話題のとりとめのないフォトレポートで、「ケガの功名?」笑顔復活のナチュラリストの活動報告をお届けします。

◎活動報告・復活の10月

9月の末、退院後も松葉杖生活に車の運転の制約などもあって、山道への乗り入れ厳禁を条件に半月ぶりのフィールド復帰は、田原川でヤマセミを期待してののんびりバードウォッチングです。(写真①) 宇治田原町からは、研究者からの要請に応えて一般には飼育や運搬さえ禁じられている毒蛇を含む両生・爬虫類の情報提供でお世話になっている倉谷勝己さんと勝井秀正さんから、それぞれカラスヘビと赤マムシ確保の連絡があって引取りに行きました。
白蛇に対して、黒化と呼ばれる色素異常のカラスヘビはシマヘビが通常ですが、倉谷さん夫妻が見つけられたのはヤマカガシで大変珍しいものです。(写真②③) また、マムシにも黒化型が知られ、かつて青いヤマカガシを発見した脇坂英弥君は、今年は兵庫県鉢伏山でアカジムグリ(写真④)を見つけました。暗いブランクでシーズン終了を迎え、年間最大行事の日本爬虫両棲類学会大会での研究発表の機会を逃したナチュラリストも、来シーズンに向けてこれら紅白に黒青…幻のヘビたちと共に、夢のツチノコ発見!に想いを馳せています。
こうした、フィールドには宝探しのような魅力いっぱいの生き物たちがいて、身近な生き物を観察することで得られる知識と経験は子どもたちにとって大きな財産となり、希少な生き物たちを守る生息環境や地球規模の環境問題まで考える大人となってくれることを期待しています。何より、感性豊かで偏見のない子どもたちに、生き物自慢をできる特権はナチュラリストの誇りであり生き甲斐となっています。
復活第一弾は、10月4日の宇治市立西大久保小学校4年生の名木川実習です。本来は現場までも鳥やチョウに道端の生き物たちを見つけながらの行程なのですが、さすがに歩行は辛く投網などの荷物があるからと車移動です。傷口を防水テープで固定し、松葉杖を放棄してのアドレナリン全開のハイテンション指導で、誰ひとりケガ人とは気付かれずに無事責任を果たすことができました。
果たして、メダカやゼゼラなど絶滅危惧種を含む淡水魚14種類を捕獲確認し、コンクリート三面張りの都市河川も生き物たちにとって大切な生息地であることを確認してもらいました。前日に仕掛けておいたモンドリが、夜半の豪雨で流されるアクシデントがありましたが、それでもアカミミガメやモツゴにドンコ、アメリカザリガニにスジエビ・ヌマエビ、ニナガイまでも入っていて苦労が報われました。
翌5日の土曜日には、ジュニアメンバーの松井優樹君・春樹君兄弟を伴っての追跡調査を行い、より詳しい資料の作成で野外学習の記録に貢献しています。目を輝かして水辺の生き物探査に没頭した子どもたちの、淡水魚をはじめ名木川学習の成果の発表会を今から楽しみにしている昨今です。(写真⑤⑥⑦)
母校・城陽市立富野小学校の生き物クラブも始まり、20日にはサイエンスエコキッズの研修会で松井優樹君共々生き物講座を行い、優樹君にも講師料が支払われる嬉しいハプニングで、ご両親も神棚に供えて感謝の合掌です。こうした周りの理解と協力が得られてこその活動であり、ともすればオタクなマニアとも見られがちなフィールド活動で、希少生物と生息環境保全の基礎資料となる公的なデータ公表での貢献がナチュラリストの使命です。育ちゆく後継者たちの活躍にご期待下さい。(写真⑧⑨)
今回の入院で、和束町の調査報告や日本爬虫両棲類学会での研究発表の期日など、精神的にもどん底にあった時、日本鳥学会の恩師・中村司先生が夢に現れ励まされたことが大きな支えとなりました。先生の墓前に法務大臣表彰の栄誉の報告もでき、直後の木津川シーズン最後の11日には、68㌢のウナギをゲットしました。(写真⑩) 再始動に弾みがついた10月の活動報告の話題は尽きません。

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