「こも編み」作業たけなわ/高級てん茶栽培に不可欠
見事な手さばきで「こも」を編む古川さん

昨年度、京都府農山漁村伝承優秀技能者『匠』の認定を受けた城陽市奈島、古川美子さん(91)の熟練の手作業が、暖冬の影響で例年よりはかどっている。
高級抹茶の原料・てん茶の産地・城陽市では、今の時期、栽培に欠かせない「こも編み」作業がたけなわとなる。
同市奈島の農家、古川與志次さん(69)方では、3年前に完成したばかりの真新しい小屋内で、90歳を超えて、ますますお元気の母親・美子さんが手作業で長さ5㍍、幅1㍍のこも編みに取り組んでいる。
「コヤシマタ」と呼ばれる木製の台と「ツチノコ」と称す樫の木で作った重りを使う「こも編み」作業を継承するのは現在、市内で美子さんと、近くに住む親戚の古川澄子さん(85)のみ。
背丈の長く、柔らかい餅米の稲ワラを使って編み上げる「こも」は、茶園の覆い下の温度が寒冷紗よりも低く保つことができ、高級てん茶栽培には欠かせない。
今シーズンも2月に入って作業を本格化させた美子さん。「今年は、温いので手荒れもなく、作業しやすいです」と優しい笑顔で話す。
作業は、朝9時ごろから夕方5時ごろまで。「近所の人がしゃべりに来てくれるので、つい手が止まります」と、気さくに取材に応じる。
今年も目標は「100枚編むこと」。ちょうど半分の50枚が完成し、3月末までに〝ノルマ〟を達成させるという。
高級てん茶を栽培する上で、最も注意しなければならないのが、新芽が出る春先の温度管理と直射日光。
その時期になると、てん茶や玉露などの茶畑の上を、化学繊維の寒冷紗(かんれいしゃ)で覆う光景をよく目にするが、茶農家は「太陽熱から新芽を守り、渋みの元となるタンニンを抑制するには、稲ワラで編んだこもが一番」と口を揃える。古川さんの存在価値はますます高まりそうだ。