【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
ようやく新型コロナウィルス緊急事態宣言が解除されました。ステイホームの自粛生活も、考えること・学ぶことが多くあり、今後に活かされる教訓となったと思えば少しは気も晴れることでしょう。
「密」とは縁遠いフィールド探査であっても、家族の意向を尊重してナチュラリストのライフワーク停滞のやるせない時間を過ごしてきました。かつては、学校が早く終わる水曜日の平日まで、ジュニアメンバーの松井優樹君を連れだして、両生・爬虫類に水棲生物から繁殖期の野鳥まで、フル稼働で自然界の宝探しに嵩じてきたフィールド最高の季節が奪われ、今後の目標にも大きな影を落しています。
バードウィークのイベントや自然観察会などの中止はやむなくとも、脇坂英弥君の研究対象種で久御山町の鳥に制定されたケリが、NHKの「さわやか自然百景」で放映されるタイムリーな企画が延期になったことは返す返す残念でした。そして、4月3日を最後に、環境省と山階鳥類研究所からの自粛要請を受けて中断していた脇坂君との鳥類標識調査も、実に51日ぶりに再開し、大きく育ったケリの雛鳥に足環を装着してコロナ鬱からも解放されました。これまで寂しい想いをさせてきた優樹君も、2カ月ぶりに助手席に乗せて川に繰り出し、スッポンゲットで溜飲を下げています。
緊急事態解除とはいえ、9月に開催予定だった日本鳥学会大会が中止となり、11月の日本爬虫両棲類学会の大会開催も危ぶまれる中、大手を振ってフィールド探査ができる日常生活に感謝し、人々に元気を与えられる朗報発信で期待に応えられるように頑張る所存のナチュラリストです。前回の野鳥写真が大好評だった「愛鳥週間野鳥ギャラリー」に続いては、愛鳥月間・野鳥を巡るバードマンの話題です。
『トリは豊かな自然環境を測るモノサシ!』 来る6月の「環境月間」に引き継ぐふるさとのお宝生物・希少鳥類たちと希少鳥人の話題にお付き合い下さい。

◎鳥人日記から

先ずは自慢の鳥友・富士鷹なすびさんと、一昨年11月に亡くなられた鳥学会の恩師・中村司先生の奥様から届いた激励のメッセージの紹介です。
ナチュラリストの活動母体である「城陽環境PS会議」では、昨年の植物編に続いて今年も「城陽生き物ガイドブック・昆虫編」を発表する予定でした。また、「生き物ハンドブック・DVD版」でも、コウノトリ・ひかりちゃんフィーバーを受けて改訂版の制作発表を6月の総会・ミニフォーラムで行う予定でしたが共に中止の憂き目です。
愛鳥週間恒例のバードウォッチングに各種イベントの中止が重なり、ナチュラリストのライフワークと生き甲斐が絶たれてへこむ筆者の元に、富士鷹なすびから届いたのが市の鳥・白鷺をモチーフにしたイラストメッセージでした。(写真①) 早速、次号の会報で発信し、なすびさんからの激励をステイホームの盟友たちに伝えます。
そして本年、日本鳥学会で「国際誌に優れた論文を発表し、将来が嘱望される若手研究者」に贈られる新たな『中村司奨励賞』が開設されました。これは国際鳥学会(IOC)の名誉会長で、故中村司・山梨大学名誉教授の功績を讃えてのもので、大恩ある師の名前が刻まれ末代まで残ることは嬉しい限りです。今年の城陽市の明るい話題、コウノトリ飛来と鴻ノ巣山に巣を架ける未来の夢を綴った当連載記事を中村司先生のご霊前に報告し、奥様より山階鳥類研究所のレアなトキコウ(ノトリ)の絵はがきで夢の実現を応援する激励文をいただきました。(写真②)
そんな折、城陽市コウノトリ終章に於いて、ひかりちゃんに続く「藍ちゃん」「和ちゃん」の飛来を実証したお手柄のジュニア鳥博士・福井惇一君から、矢継ぎ早の野鳥情報が届いて、いずれ「中村司奨励賞」にノミネートできる金の卵の発見!とばかりにスカウトしました。富士鷹なすびさんの大ファンという福井君に、ビデオ電話で当人を紹介して未来の鳥博士にエールを贈ってもらいました。中村司先生の長寿健康を祈願して、なすびさんの著書に寄せ書きをした鳥学会大会のときのお二人の写真を取り出し、復活のパワーをもらったお礼を述べています。(写真③)
さて、こうした経緯でナチュラリスト軍団に仲間入りした福井惇一君(写真④左)、脇坂英弥君(同右)から依頼のあったタマシギ(写真⑤)はじめ、オオタカにセイタカシギ(写真⑥)、コムクドリ(写真⑦)・クイナなどの希少鳥類の発見の他、生き物全般実に丹念に観察してこまめに記録を執り、最新版鳥類目録改訂に向けて期待以上の働きで応えてくれています。
ようやく脇坂君との対面も叶って、両生・爬虫類の後継者・松井優樹君(写真⑧右)との二枚看板のジュニアメンバーを要し、コロナ明けのフィールド探査・再始動が楽しみな昨今です。岡井昭憲先生(同右2)とも51日ぶり、週末にはもう2カ月以上もご無沙汰の竹内康先生に鳥垣咲子さん、井手邦彦・自然部会長たち鳥類調査班が合流し、繁殖したチョウゲンボウ(写真⑨)の見守り対策の協議で新章の幕開けです。続報にご期待下さい。(野鳥写真・山中十郎氏)

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