20日から「Depth of Light」映像配信/ピアニスト・深見まどかさん
美術・ピアノ・現代音楽が融合した舞台「Depth of Light」(写真:Mari Tanabe)

宇治市育ち、日本とフランスで活躍するピアニスト・深見まどかさん(写真:Mai Toyama)

深見まどかさんのピアノの音は、光の粒のようだった。暗い舞台に生を受け、揺れ動き、透明になり、消えて次の音が生まれた。
ロームシアター京都=京都市左京区=。約2000席のメインホールに観客はいない。舞台作品「Depth of Light」の最終リハーサルだった。
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深見さんは宇治市に育ち、日本とフランスで活躍するピアニスト。色彩感豊かなドビュッシーやラヴェルがライフワークという彼女が、美術家の大舩真言さん、武満徹作曲賞・尾高賞・芥川作曲賞の3冠に輝いた作曲家・坂田直樹さんと組み、新しい芸術に挑んだ。ピアノによる現代音楽と現代美術を融合させる舞台作品、「Depth of Light」だ。
本番は先月31日、無観客のまま行われた。その記録が、27日(日)から10月31日(土)までインターネットで映像配信される(約30分)。期間限定の有料だが、20日(日)から22日(火)までは無料で公開する。共に「Depth of Light」の公式ホームページで視聴できる予定だ。
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拠点とするフランスでもコロナ禍により2月頃から、教えていた学校での授業や予定していたコンサートが相次いで取りやめ。3月下旬には都市封鎖が行われた。「みんなが他人に責任を求める状況。何かしなければと思った」。
感動という心の動きを広げたい―。向き合ったのは表現の根幹だった。ピアノコンサートにとらわれず、音楽の垣根を越えた新しい感動を模索した。声を掛けたのが、絵と音とをつなぐ感性を持つ大舩さん。「私の演奏を聴いてシンクロすると言っていた」。新曲を依頼する坂田直樹さんも共に意見を交わし、テーマを「光」、コンセプトを「深さ」とした。「『深さ』の受け止めは三者三様。私は、太陽光の変化、時の移ろい、それと共にある感情の変化といったものをイメージした」。
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舞台美術・演出は大舩さん。ピアノ越しに、麻紙に岩絵具で大舩さんが描いた5・8㍍×2・2㍍の大きな作品がある。
坂田さんの現代音楽作品は倍音まで計算しつくされ、深見さんの高度な技術が、その形をこの世界に呼び起こす。背景の絵が呼応し、漆黒の舞台に浮かび上がる。光り、ゆらめき、生きているかのように移ろう。
「現代音楽や現代美術に触れてほしいとの思いもあった。分かりやすくはないが、その分自由に感じてもらえる。特に子供たちに見てもらい、感じたままに受け止めてほしい」
コロナ禍でなければ生まれなかった舞台作品だという。「禍」の時代に、「光の深さ」はどう対峙するだろう。
曲は、「雨の樹素描Ⅱ―オリヴィエ・メシアンの追憶に―」(武満徹)、「Depth of Light」(坂田直樹、世界初演)など全5曲。