【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

昨年度に新種登録された渓流に生息する淡水魚・ナガレカマツカ発見に奔走した今夏、コロナウィルス緊急事態宣言でナチュラリストのライフワークを果たせなかったうっぷんを晴らす成果を得て、9月の声を聞いても暑い熱いハイテンションなフィールド活動を続けています。
9月10日付の本紙に於いて、『新種の淡水魚発見! 和束町でナガレカマツカ捕獲』の記事を掲載いただいたことで、当「フィールド日記」での活動報告を裏付ける取材記事は、郷土の文献資料としても公的な意義を有するものとなりました。今回取材いただいた谷口記者には、日本一の大スッポンの捕獲や京都府の希少野生生物に指定のダルマガエルの発見やオオタカの保護放鳥など、ふるさと城陽のお宝生物の記録から生態系を攪乱する外来生物たちの侵入時期と被害状況など、過去20余年間にわたって次代に伝える野生生物たちの資料記事を残してもらっています。これからも、ナチュラリストの後継者たちが理解あるプレスマンの協力を得て、貴重な郷土の文献資料たる報道記事の発信が引き継がれることを期待しています。
さて、これまでの絶滅種・コガタノゲンゴロウの再発見や、京都府・南山城地方で新発見した幾多の生き物たちが幸運な偶然の産物であったのに対して、今回のナガレカマツカは生息確認の目標を達成した特別な想いがありました。9月12・13日に開催された和束町の生き物調査の展示会報告を終え、期待に応えられた安堵感と新種発見の余韻に浸りながら、次なるチャレンジの気概に燃えているナチュラリストです。年頭の「ナチュラリストからの年賀状」では、日本一の大スッポンのリベンジに挑む初夢を語っていますが、その相棒の疋田努先生・水野尚之先生とも半年ぶりに再会を果たして来るべき日に想いを寄せています。
まだまだ日常生活には程遠く、フィールドを謳歌する余裕もないのが現状ですが、和束町の野生生物生息調査の記録が活かされ、編集作業が始まった「生き物ガイドブック」を携えての自然観察会の開催を今から心待ちにしているナチュラリストです。今回、普通種のカマツカと似て非なる清流の新種登録魚・ナガレカマツカ発見記の最終報告は、選びきれない活動記録写真の中から厳選してのフォトレポートです。ナチュラリストの最後?のご奉公の地・和束町で見つかったお宝生物をご覧下さい。

◎ナガレカマツカ発見記

9月10日、本紙に新種の淡水魚・ナガレカマツカ発見!の記事が掲載されました。(写真①) 希少野生生物の保護と生息環境の保全をライフワークとするナチュラリストの活動に理解があり、郷土の環境資料となる数多くの取材記事で20年来お世話になってきた谷口記者には、これからも全国発信の大スクープで恩返しすべく夢も新たに燃えています。
今回のナガレカマツカ発見に至る最大の功労者が、京都府のレッドデータブック・淡水魚の執筆者の林博之先生(写真②右)で、川漁師を名乗るナチュラリストが全幅の信頼を置く専門家です。これまでにも、絶滅寸前種で野生絶滅とされていたカワバタモロコやアフリカの外来魚・ティラピア発生などの発見も、林先生が共に現地に足を運んで学術的な解説を添えて頂いたことでナチュラリストの専門外の分野でも胸を張れる功績を残すことができました。
和束町の生き物調査は、教育委員会町史編さん室が進める野生生物の生息状況の把握を目的としたもので、一昨年より自然観察会や報告会を開催してきました。これまでに、野鳥の脇坂英弥君に岡井勇樹君はじめ、植物の山村元秀先生など、「城陽環境パートナーシップ会議」が誇るそれぞれの分野の専門家の人たちの協力を得て、自然豊かな和束町を象徴する数多くの希少生物の生息を明らかにすることができました。
コロナ騒動のあおりで久々の開催となった7月12日の和束川の生き物採集観察会のメイン講師が林博之先生で、ここで採れたスジシマドジョウやアカザは他ではめったに見られない絶滅危惧種や絶滅寸前種に指定されている希少な魚であることと共に、昨年にカマツカから新種として分類された河川上流部に棲息するというナガレカマツカも見つかるかもしれないとの話を伺いました。今回ばかりはもう和束町で新たな生き物の生息実証はできないものとあきらめ気味だった筆者も、がぜんやる気スイッチオン!本格調査に突入です。
和束川は筆者も役員を務める木津川漁協の管轄で、アマゴやアユが放流されていて、入川料に使用漁具や期間など細かい規制があります。今年4月25日の和束川のアユの放流では、中川幾久夫支部長(写真③)から紹介を受けた先輩諸氏から魚やカメ・スッポンの情報を得て、調査の理解と協力を求めています。また、8月2日に和束川に来られた木津川河川レンジャーの田中実知世さん(写真④左2)たちにも、新種のナガレカマツカの情報を公開して協力要請しましたが、依然7月23日以来まったく確認できず、捕獲用漁具・モンドリも盗難の被害に遭うなど散々な日々が続きました。
そうした中、昨年に林先生とやはり南山城地方では生息記録のない絶滅危惧種のスナヤツメの探索で訪れたポイントで、カマツカの捕獲記録があることが分かりました。果たして、念願の追認調査が実を結び、木津川産のカマツカ(写真⑤)に比べて明らかに口ひげが長いナガレカマツカを捕獲確認することができました。(写真⑥) 松井優樹君が水中撮影にも成功し、通常の方法では捕獲が困難な生態を持つことも潜水調査で分かりました。(写真⑦)
そして、淡水魚の専門家・林博之先生と共に、四つ手網や韓国の漁具を再現した網を持参のモンドリ研究家・水野尚之先生と眞理先生の京大教授夫妻(写真⑧)の満を持しての参加で、ナチュラリストの和束川調査報告書にも重みが増して胸を張っての報告会に臨むことができました。(写真⑨) 活動の場を与えていただいた教育委員会町史編さん室の尾野和広先生(写真⑩右)に、やっぱり今回も「持っている奴」を実証したジュニアメンバー・松井優樹君と共に、ナガレカマツカ発見の恩返し報告で、倍返し!演出を果たせました。

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