【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

今年はコロナ禍の余波を受け、年末の「京都環境フェスティバル」が中止となって年間活動報告の場を失いましたが、「第19回城陽市環境フォーラム」は規模縮小ながらも11月21日の開催が決まり、主催者の「城陽環境パートナーシップ会議」の盟友たちと9ヶ月ぶりとなる活動再開を喜び合っている昨今です。

フィールド探査でも衣替えの季節を迎えた晩秋、日本鳥学会の門を叩くきっかけとなった巨椋池干拓田で越冬するコミミズクの観察に明け暮れた鳥人ナチュラリスト時代を想い起して、将来が楽しみなジュニアメンバーたちと今シーズンもコウノトリの飛来を期待して野鳥調査に奔走です。

前回の報告で、淡水クラゲやイケチョウガイの発見が来シーズンの課題に加わったことをお伝えしました。自然界における宝探しの夢に後押しされて、まだまだ自分でなければ出来ないと自負する幾多の目標を掲げて、これからも元気で朗報をお届けできることを願っています。10月の活動報告続編、シーズン終了を迎えた両生・爬虫類に水辺の生き物たちの雑多な話題にお付き合い下さい。

◎10月の活動報告・続編

前号の巻頭言で、10月14日の鉄道記念日にかけて大学生時代の自慢の鉄道日本記録を紹介しました。その前の9月の活動報告では、オリンピックイヤーのブラック・セプテンバー関連の内容を組み入れて序章としています。

これらの背景には、筆者が小学校6年生のときの10月1日に東海道新幹線が開業し、電車好きな少年が「夢の超特急・ひかり号」に心躍らせ、長じて4つの日本記録を打ち立てる筋金入りの鉄道マニアとなるきっかけの出来事でした。そして10月10日には、東京オリンピックが開催され、「ウルトラC」の超人技の体操に感激し、各種競技の日本人選手たちをテレビにかじりついて応援していたことを思い出します。

こうした少年期の感動体験からの想いが脈々と重ね書きされた自分史の一頁をひもといて、感性豊かな子供たちに紹介することで夢を与えるきっかけとなれば幸いと考えています。そんな啓蒙活動の実践のひとつが教育現場での環境学習授業で、母校の城陽市立富野小学校・生き物クラブの指導はもう10年余り続けています。待ちに待ったクラブ活動再開の10月20日、野外観察ではハリガネムシ出現を期待したカマキリ芸は不発でしたが、希少な水棲昆虫のコオイムシを捕獲確認できて面目躍如です。(写真①)

これまでにもダルマガエルの発見に代表される貴重な記録がたくさんあるクラブ活動で、昨年はキツネの出現もありました。京都府の希少野生生物に指定のダルマガエルでは、毎年調査を兼ねたカエルの観察会を6月に開催してきましたが、やはりコロナの影響で中止しています。それでも、シーズン終了を前に調査仲間の本城隆志・市議と共に富野小学校区の水田地帯で生息を確認し、来シーズンの再会を願って放流しています。(写真②③) 遅ればせながらのカエルの年度報告でした。

対して爬虫類では、10月1日に今年生まれのイシガメの仔亀が福井惇一君(写真④)から届けられ、来年度からのニホンイシガメ復活プロジェクトを前に早くも繁殖池で産まれたものと共に放流のその日まで松井優樹君が大事に室内飼育です。一方の増殖用の親亀たちは、甲羅に個体番号の標識を刻印してお父さんとお爺ちゃんの協力で完成した立派な亀池に放して冬眠の準備に入りました。(写真⑤) 小学校3年生で日本爬虫両棲類学会大会での研究発表に名を連ねた優樹君、来年度の学会発表に視界良好です。

10月4日の日曜日には、相次ぐヘビの情報にナガレカマツカの新生息地調査とカメ調査を中断して引取りに駆け付けました。宇治・白川の田んぼに出た赤マムシと記念撮影の小島佳剛さん(写真⑥左)は、これまでにも珍蛇情報でもお世話になっている生き物に造詣が深いナチュラリストの協力者です。かたや城陽環境PS会議の野鳥仲間・嶋田節子さん(写真⑦左)は大のヘビ嫌いながらも、この日「五里五里の丘木津川運動公園」で見つかった謎のヘビを確保して待っていてくれました。

果たして、城陽市のお宝生物として生き物ハンドブックの表紙を飾る珍蛇・シロマダラで、ホルマリンなどの液浸標本に替わる教材資料が求められていたときだけに、新鮮な屍は大変役に立ちました。かくして、中学生にして職人技を習得している福井惇一君に託して、城陽産基標本となるシロマダラの立派な作品が完成しました。(写真⑧) 本来は夜行性で個体数も極少なく、野外での観察記録もなかった幻の蛇・シロマダラの生息を信じ、実証に至った経緯はナチュラリストの胸を張れる成果のひとつです。

そんな珍蛇・シロマダラとの幸運な出逢いを果たし、貴重なデータと写真をいただいたのが、城陽環境PS会議が事務局を置く市役所市民環境課のドン・森田清逸部長です。10月31日に撮影された貴船神社・奥宮辺り…は、当時京都府で正式な生息記録がないとされていたシロマダラの目撃情報があった清滝と共に2ヵ所を調査地とし、2006年から2年間で数回夜間調査に入っていた所でした。2008年に城陽市で発見されたシロマダラの生息地図に、かつての未公認の目撃情報を裏付ける貴重な最新記録が添えられました。(写真⑨)

ヘビの記録写真では、ハンドリングと呼ばれる大きさや特徴が分かる撮影がいいのですが、毒蛇のヤマカガシ(写真⑩)は個体差が大きく、皮膚からも毒液を出すので扱いには注意が必要です。そもそも、マムシと共に危険生物として飼育や移動も禁じられていて、一般の人たちが対処できるものではありません。本来は行政や警察へ持ち込むべき迷惑な生き物や傷病鳥獣の問題も、ナチュラリストが果たすべく使命と「緊急避難的処置」としてお手伝いをしています。

10月24日の土曜日の夜、アライグマ2匹が捕獲罠にかかり、役所の引取りが週明けで何とかならないかとの連絡が入りました。畑ならともかく、敷地内に犬の餌の被害対策で設置したもので、暴れて威嚇し、糞尿の臭いのする罠の放置は困りものです。水没させるなど、自己処分される農家の方もおられますが、記録として残してやることが人間の身勝手で外来生物にされたアライグマたちへの償いとなるでしょう。かくして、井手町猟友会会長・梅本信昭さん宅に届けて処置をお願いしました。(写真⑪)

獲って成仏、喰って供養!のハンターシェフのジビエ料理、ラスカル鍋がメニューに登場です…?。正統派ジビエの、木津川産ブランドスッポン年度報告は次号で…。

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