【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

5月の愛鳥月間もあっという間に過ぎ去り、環境月間の6月を迎えてナチュラリストのアンテナには野鳥と共にヘビにカメに魚やカエル、ホタルにクワガタにキツネ等々たくさんの情報と貴重な画像が届いて、日々楽しいフィールドワークを続けてきました。
今年は近年にない野鳥の当たり年で、全国的にも稀な希少鳥類の観察や、新たに生息や繁殖が確認された野鳥たちに、コウノトリ・ひかりちゃんのリターンに代表される渡り鳥たちの再飛来の記録も計4件ありました。そして、愛鳥月間にふさわしい話題を提供してくれた庭の陶器に産卵したシジュウカラの子育てや久御山町の鳥・ケリが東角小学校のグラウンドで産卵した話題など、上半期にして学術的にも貴重な記録の数々と共に、ナチュラリストのライフワークとする野鳥保護に直結する啓蒙活動の機会が与えられたことは何よりでした。
6月に入り、久御山町で白いアマガエルが発見され、相次ぐ珍蛇たちの発見に捕獲すれば日本最大の実証となる2㍍半を超すアオダイショウなど、爬虫派ナチュラリスト垂涎の情報に加えクマの極秘情報まで届いて、フィールドの夢が膨らむ宝探しにすっかりコロナ鬱からも解放されています。こうした情報がナチュラリスト仲間の環の拡がりとなって、自然財産である野鳥や野生動物たちへの理解と保護活動の礎となってきました。
これらの朗報発信も、メカオンチの筆者を襲ったパソコントラブルと通信トラブルが重なって、リアルタイムのフィールドニュースが持ち味の活動報告が滞ったことは誠に残念でした。せっかくの原稿や一部写真の消失にはほとほと参りましたが、活動母体の「城陽環境パートナーシップ会議」も7月から本格始動し、3日の昆虫標本作成の研修会に10日の今池川・水辺の生き物観察会、8日には和束小学校の野外実習指導と、ようやくナチュラリストの日常が戻りつつあり元気も出てきました。
さて、ひと月ぶりとなるフィールド通信復活第一弾は、久御山町の鳥・ケリが東角小学校のグラウンドに産卵し、みんなに見守られて無事に巣立った奇跡の記録・愛鳥教育の実践レポートです。当地では身近なケリも全国的には局所分布の希少鳥類であり、特異な環境下に於いての繁殖という学術的な意義や野鳥保護の問題点などを、愛鳥週間のタイムリーな話題として当紙面でも紹介いただいています。
これまでにも随時お伝えしてきましたが、みんなの願いが叶って無事孵化に至り、そしてこの度本来の生息環境の水田地帯に移動して日々元気に育っています。教育現場を舞台の後世に伝えたい野鳥保護の記録『東角小学校・ケリのハッピーバースデイ物語』をご覧下さい。

◎フォトレポート

野鳥の保護に携わるようになって、マスコミ報道が大きな役割を果たしてくれることを実感しています。今やSNSなどで様々な情報が乱れ飛ぶ中、責任の所在がはっきりとしていて、衆人の眼を経た報道記事は、公的意義を有する文献資料となりうるものです。
本紙6月23日付紙面(写真①)で報じられた東角小学校の校庭でケリの雛鳥誕生!の記事は、児童たちの想いが実を結んだ背景描写を、多くの写真を用いた詳細な経過報告で文献資料に物語性が加わりました。今後の研究発表の際に添える貴重な資料記事を発信いただいた久御山町担当の池本記者は、筆者より早く現場に駆け付けて巣立った雛鳥の撮影をされていました。(写真②) 熱心なプレスマンと雨の日も見回りに同行してくれた仲間たち(写真③)の協力があって、愛鳥週間に始まる「東角小学校・ケリ物語」を、最高の形で幕引きすることができました。
何よりお伝えしたい末っ子雛の誕生秘話を聞いて下さい。ほぼ毎日抱卵の確認に行き、三日目ごとに巣卵に異常がないのを確かめ、ケリの巣を見守ってくれている子供たちとも記録写真を撮っていました。(写真④⑤⑥) そんなある日、ついに卵の中からの鳴き声を確認し、先生方に歓喜の報告です。後3日ほどで孵化する旨を伝えて、雛鳥たちを安全に移動させる手段を考えていました。
果たして、ドンピシャ3日後の日曜日、早朝には抱卵していたケリが夕方に行くと姿が見えません。大慌てで探すと巣から50㍍も離れた所で明らかに雛鳥を抱いた親鳥の姿を発見し、とにもかくにも野ざらし状態からの安全確保と繁殖の記録を留めるべくグラウンドに合鍵で立ち入りました。こんな時に限って独りも、状況が分かる記録写真を残しています。
親鳥の下には3羽の雛鳥がいて、うずくまって擬態している雛鳥(2羽)を、校舎をバックに記録しました。(写真⑦⑧) 元の巣から30㌢ほど外に1卵が放り出されていて、放棄されたものと判断しました。鳴き声確認も4卵中3卵であったことから、無精卵や死卵と思われ、標本にすべく持ち帰りました。(写真⑨)
話は翌日に飛びますが、孵化した雛鳥の取材に来られた池本記者に放棄卵を披露するや、中からピィーピィ!と鳴き出して…物語第二章の始まりです。てんやわんやの大騒動で末っ子雛が誕生しました!(写真⑩) 結果的には大大成功の胸を張って報告できる成果で鳥人ナチュラリストの本懐を遂げることができたのですが…。我が掌の中で産まれた奇跡の命の続編・ハッピーエンド報告をお待ち下さい。

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