【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
今年の当連載第一弾では、お正月3日に宇治川で発見されたコウライアイサを取りあげ、全国的にも貴重な希少鳥類の観察記録を留める機会としました。初夢ビッグニュースはまたたく間に拡がり、平日からもたくさんの愛鳥家たちが訪れ、上流部は天ケ瀬ダム下の朝霧橋から下流部は観月橋近くまでの広い範囲でオスのコウライアイサ1羽が確認されていました。世界的な大珍鳥の飛来に、30数年来の鳥仲間たちも駆け付けて、寒風の中もホットなバードウォッチングを楽しみました。
そんなコウライアイサは1月15日を最後に餌場としていた宇治橋下の「太閤堤跡」近辺では観察されず、17日と21日に撮影された人がいるとの情報を得ていますが、観察者も数えるほどで今後の追認情報も期待できず、筆者も22日を最後に宇治市流域での生息は無いものと判断しました。本来なら、最下流部の八幡市の三川合流辺りまで探して自身で納得のいく調査記録を残したいところですが時間的余裕がありませんでした。
実は時同じくして、昨シーズンに京田辺市で越冬が確認されたシラコバトが、今シーズンも飛来していたことが判明し、追認調査が始まりました。こちらとて京都府初確認の珍鳥で、近畿地方では和歌山県と大阪府で記録があるものの、共に一過性の迷行記録で越冬地としての2年連続の飛来は全国初となる誇れる記録となります。久しくの学会発表できる成果を期待し、喜々として調査メンバーたちと確認に奔走しています。
昨年の同時期も、シラコバトの調査と城陽市に再飛来したコウノトリ・ひかりちゃんの観察がバッティングする嬉しい悲鳴がありましたが、元祖瑞祥の福鳥・コウノトリの飛来の初夢も2月を迎えてまだまだあきらめていません。鳥から爬虫類派ナチュラリストに宗旨替えした筆者が、再び鳥人ナチュラリストに戻って鳥類標識調査や巣箱プロジェクトに携わるきっかけも、コウノトリが縁の鳥仲間たちとの出会いにありました。
2019年12月に城陽市に飛来したコウノトリは、標識足環から前年に福井県越前市で生まれた「ひかりちゃん」の愛称をもつメスであることも分かり、昔から瑞祥の福鳥と呼ばれてきた縁起の良い優美なマドンナ鳥は大きな話題となりました。日々の基本情報から、貴重な越冬生態と記録写真も寄せられ、全国的にも極稀な特殊な環境でのコウノトリの越冬記録は、城陽環境PS会議主催の「第19回城陽市環境フォーラム」の記念講演で『コウノトリが教えてくれた城陽市の生物多様性』の演題で報告されています。
初年度には、ひかりちゃん以外にも徳島県鳴門市生まれのコウノトリ姉妹の飛来をスクープの少年に、食性や貴重な生態が分かる数々の記録写真の提供者たち、昨シーズンは最初に市役所環境課事務局に飛来報告をいただいた方々と共に観察を続け、今では広くバードウォッチングからフィールド探査や関連イベントにも欠かせないナチュラリスト仲間として調査員登録し、活動記録やフィールド現認者として協力いただいています。
おりしも昨年暮れの和束町のクマ騒動に関連しての報告を機に、2004年当時の宇治田原町での調査記録を見直し、現在に至る調査仲間たちとの懐かしい写真から大いなる元気をもらいました。ふるさとの生き物たちが巡り会わせてくれたこれらナチュラリスト仲間たちの話題を中心に、今年で古希を迎えるロートル・ローカルナチュラリストの2022年ハッピーライフ始動のフォトレポートにお付き合い下さい。

◎写真で綴る活動日記

今年は正月2日からレジェンドの客人を招き、コロナ禍で中断を余儀なくされていた我が家名物・自然の恵みの会が復活しました。(写真①) 毎年2月の第一日曜に開催されていた木津川マラソンに参加の、名古屋と広島の友人を囲んで激励前夜祭のスッポン鍋の会が年中行事となっていましたが、コロナ禍中止のあおりでもっとも楽しみな生き物談義が弾むナチュラリスト仲間の懇親の場が消滅して早くも2年が経ちました。
今回、水中写真家で絶滅種のクニマス発見で知られる田口哲先生(同左2)が、水鳥たちの水中写真を取り入れ、動画も見られる野鳥図鑑の出版を企画されていて、ナチュラリスト仲間の京都水族館元副館長の関慎太郎さんからの紹介を受けて協力の運びになりました。ともあれ、筆者も30年来活用してきた淡水魚の識別図鑑(写真②左)の著者で、9月17日に誠文堂新光社から出版されたばかりの「日本の淡水魚図鑑」をいただき、これを機会に今後の淡水魚調査のアドバイスを願えたらとナチュラリスト仲間との交流の場の設定となりました。
依然コロナ禍での自粛ミニ懇親会は、猟師仲間から提供を受けたシシ肉のぼたん鍋を囲みました。プレミアシートの参加者は、昨年に「和束の生きものハンドブック」の完成でお役目を終えた和束町の淡水魚調査メンバーの林博之先生(①右2)に水野尚之・真理先生夫妻(同左)に、生き物好きな孫の英次郎君に著書への為書きゲットの来賓は島本憲司さん(同右)です。レジェンドからクニマス発見のエピソードなど貴重なお話をたくさん聞くことができ、筆者も天然記念物のイタセンパラやカワバタモロコなどの希少淡水魚発見の自慢話で溜飲を下げ、コロナ鬱解消の楽しい新年会となりました。
本題の野鳥図鑑の監修では、田口先生が自慢の愛弟子・岡井勇樹君とフィールド仲間でもあり、日本でも指折りの識別能力にたけた岡井君が既に目を通していたこともあって筆者の出る幕もありませんでした。やはり自慢の愛弟子の鳥類学者・脇坂英弥君と共に、水中カメラマンの特性が活かされた新しい野鳥図鑑の完成を今から楽しみにしています。
淡水魚調査に心強いアドバイザーを得て、これからのフィールド調査にも夢が膨らみます。今年は、極寒の年末にも防賀川で調査をされていた林博之先生のサポーターとして、絶滅種・ヨドコガタスジシマドジョウの再発見を夢みています。林先生作成の「京都府南部の淡水魚」の試作版(写真③)も、漁具の研究者でもある京大名誉教授の水野尚之先生(写真④左)の「滅びゆくモンドリ漁」の企画展で、あらためて郷土の淡水魚ガイドブックとして公表できたらと考えています。
そして、フィールド探査と共にナチュラリストのライフワークとする啓蒙活動の幕開けが、9日に木津川市の交流会館で開催されたサイエンスキッズの研修会でした。この2年間、コロナ禍で活動の場が激減して凹むナチュラリストに、夏祭りの開催で元気をもらいました。今回もコロナ対策を厳重に、佐々木和也先生(写真⑤中)と内藤さかえ先生(同左)にお世話いただき、定番の「ふるさとの生き物たち」をテーマのパフォーマンスでは、タイガースバンダナに虎柄ファッションで、正月ネタの干支のトリビア・虎が深刻な絶滅の危機にある現状などを解説し、爬虫類冬眠期間は生きた教材に替わって珍蛇たちの貴重な標本が必携アイテムです。(写真⑥) そして、お隣の和束町で新種を発見したぞ!とナガレカマツカの標本(写真⑦)も披露し、ここで見つかったツキノワグマのホットな話題で盛り上がりました。
かくして懐かしい写真を蔵出ししてきました。宇治田原町で交通事故死したクマの鑑定では、500円玉大のダニがいくつもついていたことを思い出します。(写真⑧) そしてもう一枚、ヤマカガシの黒化型・カラスヘビをゲットしての記念撮影には、地元の阪本伊三雄先生(写真⑨左)と共に水野尚之先生・林博之先生に岡井勇樹君たちの姿が、ジュニアメンバーたちと共に写っていました。20年の歳月を経ても尚、フィールドの夢を共有できるナチュラリスト仲間たちに支えられ、水ぬるむ楽しみな季節を迎えます。朗報発信にご期待下さい。

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