あすへ立つ〝玉露庵〟/京田辺
観光協会事務局のスペースをリニューアルした「京たなべ玉露庵」

京田辺市観光振興ビジョンに掲げる「ひとやすみ観光」を具現化した『京たなべ玉露庵』はGW中に幕を開けた。中心市街地で特産の玉露を楽しめるほか、他の特産品のアンテナショップとなる拠点に位置づけ、市内各スポットを結ぶ要としての期待は高まる。コロナリカバリーの先はまだ見通せず、交流人口の拡大に向けた地道な努力が続く。
京田辺市観光振興ビジョンは「(大都市間の)通過点。他の観光都市にない魅力を発信し、誘客する必要がある」と背景を述べ「市民と観光客が『ひとやすみ』できるまち」を目指す「ひとやすみ観光」を標榜する。
市内では、2000年代に大型宿泊施設が閉館・閉鎖するなどして、観光入込客数は半減して以降、年間20万人に届かない状況は16年まで続いた。
その後、18年秋の「そうだ京都、行こう」キャンペーン(JR東海)で一休寺が取り上げられ、12月にはスパ&ホテル水春が松井山手に開業したことも受け、同年の観光入込客数は年間約31万人まで伸びた。温浴施設がメインとはいえ年間宿泊者は数十万人という水春効果もあり19年(令和元年)は約88万人に達した。
しかし、コロナ禍が始まった20年は約60万人(前年比約30万人減)にダウンした。

■交流人口拡大に向けて
ストーリーとテーマを重視する「ひとやすみ観光」は、京阪神在住者をターゲットにした日帰り観光、京阪奈からのひと足伸ばし観光、農業体験など市民と観光客の交流機会の拡大、京田辺ブランド「一休品」の開発・宣伝・販売―などを基本方針に並べる。

新たな観光拠点の船出をテープカットで祝う(2日、リニューアルオープンセレモニー)

市の中心拠点の一つであるJR京田辺駅周辺に観光拠点を―と、かねて待ち望まれた観光案内所のリニューアル。
公募で決まった愛称「京たなべ玉露庵」は今月3日、市商工会館CIKビル1階(市観光協会事務局と併設)にオープンした。
各賞受賞を誇る「日本一のまち」自慢の玉露の淹れ方を体験でき、心行くまで味わってもらうスペースが産声を上げた。
上村崇市長は「玉露をツールに市内各地をつなぐ。市民にもここで玉露を体験してもらいたい。観光情報を発信して、市の観光資源をつなぐ。交流人口を拡大し、市内経済を盛り上げたい」と期待を寄せる。
市と市観光協会、㈱日本旅行の3者は今年3月に包括連携協定を締結し、専門家の知見とノウハウを得る施策の一環として、同協会事務局次長兼観光案内所所長を担う人材が出向・派遣された。
玉露庵では、要冷蔵も取り揃える「一休品」の展示・販売を行うアンテナショップの強化、スイーツ手作り教室を開くなどの取り組みを進める。
市観光協会の松尾憲雄専務理事兼事務局長は「玉露をアピールしてきたが、市内で実際に飲める場所は少なかった。日本で唯一の、玉露を淹れて飲める観光案内所をPRしていきたい」と強調。
市は「市制25周年の年。初の市民まつり『たなフェス』もある。商業観光分野でかかわりを増す交流都市の千葉県習志野市や大阪府泉佐野市とも連携を深め、交流人口の拡大に努めたい。大きなイベントもできれば」と今後を見据える。