企画展「名所図でめぐる宇治十二景」/4月21日まで・宇治市源氏物語ミュージアム
『宇治川両岸一覧』の拡大パネル。宇治橋東岸や橋寺が見える

宇治市源氏物語ミュージアム(宇治東内)企画展示室で、企画展「名所図でめぐる宇治十二景」が開かれている。神仏霊場への参拝を中心とした「旅ブーム」でにぎわう江戸期に著された数々の版本などを通して、今に残る名所旧跡をたどってもらう。

『京羽二重』の一部。矢印の先に「宇治十二景」が書かれている

企画展タイトル「宇治十二景」は、江戸前期に出た京都案内本『京羽二重』第四巻の末尾に収録されている。春岸酴醿、清湍蛍火、薄暮芝舟、槇島曝布…などは、いずれも宇治川の情景を表している。橋姫水社、浮船古祠の2つは、源氏物語「宇治十帖」ゆかりの地で知られる。12番目の「興聖晩鐘」は、当時としては新しい名所だった興聖寺を織り込んだもの。
1863年刊行の絵入り地誌『宇治川両岸一覧』は、伏見・豊後橋から宇治を経て、田原川合流点までの宇治川沿岸を描く。彩色が施された挿絵はリアリティあふれる描写で、時代が移っても変わらない良さを伝える。ページを拡大したパネルを見ながら、宇治川の自然を堪能してほしい。

『能楽図絵 能 頼政』では、宇治十二景の一つ「扇芝孤松」が描かれる

十二景の一つ「扇芝孤松(おうぎのしばのこしょう)」は平等院境内にあり、武将・歌人である源頼政が最期を遂げた場所として知られる。『能楽図絵 能 頼政』では、宇治川の戦いで敗れ自刃した頼政と、松木が生えた境内の風景をコラージュ形式で表現している。
展示は図絵や屏風など史料35点・パネル4枚。4月21日(日)まで。午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)。月曜休館。観覧料は、大人600円、小人300円。問い合わせは同館℡0774‐39‐9300まで。