
城陽市歴史民俗資料館「五里ごり館」で、21日からJOYOエコミュージアム・令和5年度秋季特別展『城陽の絵図と地図―描かれた近世の村』が始まる。今回の特別展では、現在の城陽市域を描いた近世の絵図を展示。景観の移り変わりや隣村との関係(もめごと)など村社会の人々の生活を読み解く内容となっている。合わせて、伊能忠敬が全国測量の際に長池宿に泊まったエピソードに絡め、本人が作製した「大日本沿岸輿地全図」=大図・中図・小図で構成=で、城陽近辺の様子を紹介する。
特別展の展示構成は「絵図とはなにか」、「様々な絵図」、「伊能忠敬と城陽」の3つに分かれる。
展示ケースに並ぶのは、市歴民に寄贈されたものに限らず、寺院や自治会、個人が所蔵する絵図の数々…。
このうち、市辺自治会所蔵の「五カ村立会山 山論関係絵図」=1718(享保3)年=は、当時、山が建築・治水・利水・燃料材の供給地だったこともあり、村境や開発を巡って争いごとが多く起こったことから、その争論内容を絵図で表現したもの。
ただ、その色分けを見ると、青谷川の南側は「緑」、北側は「茶」で着色されており、山砂利採取跡地が象徴するように、江戸期から川の北側の山は砂礫層だったことが分かる。
また、市北部の「上津屋村全図」=江戸時代・個人蔵=では、木津川を挟んで城陽市と八幡市にある同じ地名「上津屋」が同じ集落を形成していたことがはっきりと分かる。そうなると当然、川を行き来する水運が重要となり、全図には「帆掛け船」「渡し舟」や「大船着場」等が描かれている。
また、「伊能忠敬と城陽」のコーナーには、全国測量の一環として伊能隊が1814(文化11)年3月に京の都で書かれた伊能隊の先触れ(文書)が長池の地に届いたことを紹介。
それには「10名ほどが行くので宿泊の準備をしておくこと」、「夜に星の観測をするため、器具を設置するので10坪ほどの見晴らしの良い場所を用意すること」と指示内容が記され、「宿泊代と食事代は規定通り支払う、食事は有り合わせの一汁一菜の他は不要…」などと測量を滞りなく行うことが主目的であったことを感じさせる文章が残されている。
伊能隊は同年3月6日前後に南山城地域を通過。宇治郷から広野村を経て、奈良街道を平川村、久世村、寺田村と通り、長池宿で泊まり、翌7日に観音堂、中、奈島、多賀を経て、玉水宿で昼休憩を取ったとされる。
今回の展示では、2021年3月に新たに伊能小図の副本と確認された「実測輿図第二」(ゼンリンミュージアム蔵)など、伊能が手掛けた「大日本沿岸輿地全図」=大図・中図・小図で構成=が展示。とくに、城陽近辺をクローズアップし、伊能が使った実測道具も写真等で見ることができる。展示の点数は実物17、写真・図表・パネル29の計46点。
特別展の開催期間は12月17日(日)までの約2カ月間。月曜日や祝日の翌日などは休館。「関西文化の日」である11月3日(金・祝)と最終日12月17日(日)は、誰でも無料で入館できる日とする。
なお、市歴民「五里ごり館」の開館時間は午前10時~午後5時。入館料は大人200円、小・中学生100円。ただし、市内在住小・中学生や65歳以上の高齢者、身障者手帳を持つ人は無料となる。
■11月23日に文化財講演会
秋季特別展の関連事業として、11月23日(木・祝)午後2時から市福祉センターホールで、第95回文化財講演会が開かれる。
講師は、京都ノートルダム女子大学非常勤講師で「京都高低差崖会崖長」の梅林秀行氏。演題は「城陽市の凹凸を歩く―史資料からみた景観変遷」。参加費は無料。定員150人。希望者は市歴民℡0774‐55‐7611まで。