源氏物語の作者・紫式部の生涯を描いた大河ドラマ『光る君へ』(NHK)の放送もあり、かねてより源氏物語のまちづくりを展開してきた宇治市には昨年、多くの源氏ファンが訪れた。市源氏物語ミュージアム(家塚智子館長)の入館者は約23万1100人となり、過去最高を記録。放送終了後の先月も前年同月比で約2割増となっており、勢いを持続している。
1000年以上前に書かれた長編小説・源氏物語(全54帖)は最後10帖の舞台が宇治のため、市は1989年度の国の「ふるさと創生事業」を活用し、作者・紫式部の名前を冠した文学賞などを創設するなど、源氏物語のまちづくりを進めてきた。
昨年、紫式部の生涯を描く大河ドラマ『光る君へ』が放送される中、市は官民一緒になって「紫式部ゆかりのまち宇治魅力発信プロジェクト」を展開。市民にふるさとの魅力を伝えるとともに、観光客の誘致につなげた。
これらの効果もあって源氏物語ミュージアムには観光客が押し寄せ、昨年は約23万1100人が来館し、目標の16万人を達成。これまで最多だった源氏物語千年紀の2008年の約20万7000人を上回る活況となった。
千年紀の時は、イベントが本番だった11月に4万人以上が来館したが、昨年の特徴は、年間を通じて来館者が絶えなかったこと。月間2万人超えは、1998年10月のオープン以来、23年までに7回しかなかったが、昨年は5回(3、5、6、10 、11月)記録した。
家塚館長は「大河ドラマが起爆剤になったことは間違いないが、30年以上続けてきた源氏物語のまちづくりの土壌があってこそ」と分析。『光る君へ』は昨年12月15日に最終回を迎え、今年は来館者の大幅減が予測されていたが、先月は前年同月比で約2割増となっており、家塚館長も胸を撫でおろしている。
■市開催「大河ドラマ展」は目標に及ばず
一方、京阪宇治駅北西に位置する、お茶と宇治のまち歴史公園内の交流施設「茶づな」で、市が開催した『光る君へ 宇治 大河ドラマ展~都のたつみ 道長が築いたまち~』=昨年3月11日~今年1月13日=の来場者は、目標15万人を掲げながら、11万7160人にとどまった。
認知度を上げようと、各種広告を打ったほか、ゴールデンウイークにはJR宇治駅からの無料送迎を実施した。入館者が好調な源氏物語ミュージアム(大河ドラマ展開催中に約20万8000人来館)で割引セット券も販売。市民向けには無料招待を3回実施し、延べ約9600人が来場した。
市は「茶づなのミュージアムは年間11万5000人を来館目標にしており、決して少なくない。茶づなを知ってもらうきっかけにはなった」と説明する一方、目標が未達成となった点に関しては今後、同プロジェクトの中で分析する。