
1994年に「古都京都の文化財」としてユネスコ世界遺産となった平等院。その境内にある資料館、ミュージアム鳳翔館「鳳凰の間」で、登録30周年を記念した特別展「光は国を越えて」が始まった。第1期の展示は、今月開幕の大阪万博にちなみ「内国勧業博覧会と名所観光」がテーマ。展示史料の半数以上が初出展。6月22日(日)まで。

内国勧業博覧会は、明治政府が国内の殖産興業を目的に、全国から募集した物産を審査し、優れた出品者に褒章を行ったもの。第1~3回の開催地は全て東京だったが、第4回に京都が初めて選ばれた。
京都の博覧会は1895(明治28)年4月から京都市左京区の岡崎で開幕。商工業製品のほか、美術品なども出品された。一方、宇治をはじめとした周辺地域では、観光名所を案内する記事や書物が多く出た。

日出新聞(京都新聞の前身)は、博覧会当初の記事に続いて「京名所案内記」を連載。そのうち「菟道(うじ)に遊ぶ」と題して平等院を紹介した内容では、当時阿字池をはさんで鳳凰堂の対岸にあった製茶記念碑に触れ「これがために好風景を害せられし」と率直な感想を記している。なお、1888(明治21)年に建てられたこの碑は、後に鐘楼下に移され、さらに昭和大修理の際に現在の表門脇へと移動した。
会場奥には、内国博の受賞者を含めた当時の美術家たちが、平等院をモチーフに描いた作品が並ぶ。いずれも、明治期に広まった、おぼろげな表現が特徴的な「朦朧体」が使われている一方、六嶺樵夫『名所紀行図鑑』(明治28年)では、輪郭をはっきりさせる線画の手法がとられており、比較すると面白い。
館長の神居文彰住職は「今回の特別展では、半年以上かけて、内国勧業博覧会など6つのカテゴリーから、古代から近現代の初公開資料を中心に、そこから誕生する新しい文化と平和を模索したい」とコメントを寄せた。
今回展示の20件30点のうち、18点が初出展。第2期は6月24日~8月27日、第3期は8月29日~12月14日。会期中は無休。入館は無料だが、別途拝観料(大人700円、中高生400円、小学生300円)が必要となる。