
宇治市源氏物語ミュージアム(家塚智子館長)で、本年度最初の企画展「写真でつづる源氏物語、京、そして宇治」が始まった。
『源氏物語』や紫式部をイメージさせる、京都市在住の写真家・中田昭さんの作品を展示している。
中田さんは1951年京都市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。芳賀日出男氏に師事。(公社)日本写真家協会会員。「京文化」をテーマに、風景・庭園・祭りなどの撮影を続け、『源氏物語を行く』(小学館)をはじめ、近年では(公財)古代学協会監修の『史実でたどる紫式部』(2024年、光村推古書院)など、多くの著作に写真が掲載されている。
展示は、中田さん撮影の作品44点を並べる。約30年間撮りためたものから選んだ。風景の変遷や行事が行われなくなったことにより、今では撮れないものもあるという。
作品「夕顔 下京区夕顔町」は、暗くなった軒に夕顔の花がおぼろげに浮かび上がる。「激流 宇治川」は、しぶきを立てる宇治川の表情を捉えたもの。「浮舟が身投げしようと覗いた宇治川をイメージした」(中田さん)という。
ほかに、「乞巧奠 冷泉家」「鬼やらい 吉田神社」などの伝統行事、「舞楽・青海波 伊勢神宮」「五節の舞 いちひめ舞楽会」などの舞台、「夕照 平等院鳳凰堂」「きぬぎぬの夜明け 東山」といったうっとりするような光景などが写されている。
中田さんは「『源氏物語』は、夢と現実が交差しているように思う。撮影の時も惑わされたが、物語を咀嚼しながら撮った。作品が点から線になり、物語が浮かび上がる」と話した。
写真のほかに、「源氏絵鑑帖」「都名所図会」も展示。坪内淳仁学芸員は「現代の写真と江戸時代のビジュアルを見比べて」と案内している。
6月29日(日)まで。午前9時~午後5時。月曜(祝日の場合はその翌日)休館。観覧料は、大人600円、小人300円。なお、6月24日(火)は設備改修のため臨時休館する。