【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
フィールドの新学期、ナチュラリストにとって待ちに待ったベストシーズン到来も、コロナウィルスによる緊急事態宣言でライフワークとする自然観察会などの啓蒙活動の場を失い、繁殖期を迎えた野鳥調査も、環境省・山階鳥類研究所からの自粛要請を受けてケリをはじめとする鳥類標識調査の全面中止で、寂しい限りのゴールデンウィークを迎えました。
バードウォッチングに昆虫・水棲生物の採集会やカエルの観察会など、生き物を慈しむ同好の人たちとの出会いの場であり、子どもたちの輝く瞳と笑顔にフィールド活動のパワーをもらってきたロートルナチュラリストにとって、これら生き甲斐とする年間行事のイベント中止は、天性の楽天家をもコロナ鬱症候群に陥れ、日常生活にも不安を抱く日々を送っています。不要・不急、およそ対極にあったフィールド派ナチュラリストも、マスク着用のうがい・手洗い習慣と共に心掛けています。
調査仲間やジュニアメンバーたちとのフィールド活動もできずにストレスも溜まりますが、「独り川開き」で淡水魚とカメ類の調査を始め、スッポン漁を前に初物をゲットしてテンションも上がっています。いよいよ考案した外来生物・ヌートリアのオリジナル捕獲罠の製作に取り組む意欲もわいてきました。
愛鳥週間を前に、せめて紙面で野鳥讃歌のアピールをできる朗報発信の準備中です。「フィールド新学期、超低速発進!」の続編は、GWを迎えて単独・時短のフィールド活動の現状と、話題には事欠かない生き物トピックスです。やっと加速度も増しつつあるナチュラリストの活動報告にお付き合い下さい。
◎GWサイレント活動
5月1日付「広報じょうよう」に、春の生き物特集が掲載されました。(写真①) フィールドのベストシーズンを迎え、当初は4月15日号に掲載予定でしたが、急きょコロナウィルスに紙面を譲り、再編集では魚やカエル、昆虫より見栄えのする野鳥たちの写真に差し替えて紹介されています。
昨年、「城陽の生き物ガイドブック・植物編」を作成された城陽環境パートナーシップ会議の盟友・山村元秀先生は「ホトケノザ」をイチ押し! 「スーパー子ども生き物博士!」の松井優樹君は、ミナミイシガメを挙げています。かくいう筆者、フィールドでの宝探しにふさわしい希少生物として、天然記念物の淡水魚・イタセンパラに珍蛇・シロマダラ、ダルマガエルに背中線ヌマガエルといった城陽市ゆかりのお宝生物たちの列挙も、やはり野鳥のコアジサシに決まりました。
オオタカ・タマシギなどと共に京都府の条例で「希少野生生物」に指定の絶滅危惧種・コアジサシ(写真②山中十郎氏撮影)は、昔から「カワラバシ」の名で親しまれ、木津川の河原で子育てをしていました。今や国際希少鳥類となってしまったコアジサシ、標識した個体がオーストラリアを往復したリターン記録が自慢の鳥人ナチュラリスト、そのルーツは親鳥から威嚇の攻撃を受けながら巣や雛鳥を探した少年期の原体験にあります。カワラバシの俗称と共にふるさとの川から消えつつあるコアジサシの、朗報発信続編にご期待下さい。
さて、今年の川開きは、城陽環境PS会議が毎年夏場に「水辺の生き物観察会」を開催している今池川です。(写真③) 昨年の観察会での冒頭、井手邦彦・自然部会長から『40㌢のスッポンを見ました!』との驚愕の挨拶があって以来、事実なら日本一の大スッポン発見で3度目のリベンジを果たせるとあって昨年来足繁く通っています。果たして、お目当てのスッポンとイシガメは確認できませんでしたが、近年復活の兆しがみえるホンモロコなど、今池川の常連たちと再会して生き物リスト2020年度版に再登録です。(写真④)
そして、木津川2代目川漁師宣言のナチュラリストの本流での活動早々の5日、初物スッポンをゲットしました。(写真⑤) 富士鷹なすびさんから贈られた日本一の大スッポン!記念イラストTシャツのご利益で、今年も岐阜大学で研究されている繁殖実験に供与すべく初代川漁師の親父の形見・オリジナルスッポンモンドリの漁で自然の恵みを拝します。
木津川で天然記念物の淡水魚・イタセンパラを発見したことが自慢のナチュラリストに、今年になって復活プロジェクトからお声がかかりました。木津川漁業協同組合の役員・総代となった筆者、地元の中川喜久夫支部長を誘って1月19日に研究者や専門家たちとの企画会議と現地視察(写真⑥)で始まった「イタセンパラ復活協議会」に参加しましたが、ここでもコロナウィルスの影響で当面は活動停止となっています。
初めての木津川漁協の総代会では、木津川の魚類リストと関連の資料配布で先輩諸氏にご挨拶したかったのですが、やはり中止となって淡水魚と水棲動物の調査に有力な情報や協力要請の機会を失う結果となり、一日も早いコロナウィルス緊急事態が終焉することを願っている昨今です。それでも、4月25日にアユの放流事業に参加することができ、和束川と木津川本流3カ所で計250㌔もの若鮎をバキュームカーの様なホースとバケツで放流するのに立ち合いました。(写真⑦)
地元の山城大橋を背景に、和歌山県日高市からの運搬車と役員の人たちと共に記念撮影です。(写真⑧) こうしためったに見られない感動の放流事業も、小学生の野外実習授業や見学会に組み入れて、木津川の自然と生き物、環境や資源の管理を学ぶ啓発活動の機会にできればと考えています。とかく愛鳥家から非難の的とされるカワウの駆除も、その被害を目の当たりにすると保護と愛護を取り違えたトリ目線の主張であることが分かります。
城陽市議会議長の熊谷佐和美さんから、青谷川で見つけた動物の足跡の問い合わせがあった写真は、親子と思われるアライグマのものでした。いまさら云うまでもなく、生態系を攪乱する外来生物の駆除は必要不可欠な絶対条件です。ここでも愛護団体のクレームがあり、心ない人たちの餌付けが問題になっていますが、1頭のアライグマが捕食し、駆逐する生き物たちを考えると、その存在を肯定することはそこに棲む在来の生き物たちの激減・絶滅を招くことを認める矛盾する論法です。
ドッグフードやイチゴ畑の被害著しく、捕獲罠を設置したところアライグマがかかり、GWの夜間でもあって引き取り手に困った人からの連絡を受けて駆け付け、井手町猟友会の梅本信昭会長宅に届けました。(写真⑨) ラスカルが大好きなナチュラリストも、アライグマの駆除は使命であると思っています。マムシの駆除にヘビやカエルの問い合わせにたくさんの野鳥情報。一緒にフィーバーできる相棒がいないのが寂しい自粛フィールド活動も、だんだんとエンジンが温まってきました。