中学校の普通教室で、新聞5紙(朝日・毎日・読売・産経・京都=順不同)の読み比べができる環境が整う。東城陽中学校(山本泰之校長、422人)は、今年度も6月から城陽市新聞販売協議会(木引一眞代表)の協力で、3年生4クラス分の朝刊5紙の無償配達を受け、生徒らの教養を深める一助に活用している。
今年度から順次、実施されている新学習指導要領には、情報活用能力育成のため、新聞などの利用が明記された。さらに、2018年度の全国学力・学習状況調査では、新聞を「ほぼ毎日読んでいる」児童・生徒の成績が、「ほとんど・全く読まない」児童・生徒に比べ、最大13・6ポイント上回る結果も出ている。
国は2012年度から「学校図書館図書整備等5カ年計画」として学校図書室への新聞配置のための地方財政措置を講じているが、クラスの教室に新聞を配置するまでには至っていない。
そこで、城陽市新聞販売協議会の木引代表は、一昨年3月ごろ、府立城陽高校の学校評議員の会合で、同席した山本校長(当時・城陽中校長)に対し「生徒たちのために、中学校教育にもっと新聞を生かせないものか。可能なら(無償で)教室に5紙を入れさせていただきたい」と相談した。
社会科の教員でもある山本校長は「大変ありがたい話をいただいた」と受け止めつつも、まずは「校門付近のポストに配達される新聞を、3年生の各クラスに分けて配架する方法と、読み終わった古新聞の処理をどうするか…生徒たちの役割を確立する必要がある」との認識だったという。
そして、昨年4月に山本校長は、東城陽中に異動。当時の川北久樹教頭(現・城陽中教頭)とともに、東城陽中3年生の全クラスの教室に、朝刊5紙を配置してもらう体制を整え、昨年6月から朝日・毎日・読売・産経・京都(順不同)各紙の読み比べができる環境を整えた。
山本校長は「インターネットの普及やテレビのニュースなどで情報が素早く入手できる時代にあり、新聞は正直、遠い存在になりつつある。しかし、社会の様子や地域の出来事などバランスの取れた情報源として新聞の存在は大事」と、同協議会の厚意に感謝している。
2年目の今年度も学校が本格再開された6月から3年生4クラスに平日朝刊5紙が入るようになり、朝読書の時間などを利用して生徒らが紙面を広げ、興味のある記事を熟読している。
このうち、3年3組の石坪遼馬くん(14)は「コロナの記事や高校受験に関することに興味を持って新聞を読んでいます。(5紙それぞれに)特徴があり、読み比べることで正しい情報を見極めることができます」とコメント。
昨年度は府中学校教育研究会・社会科研究部会長、今年度は城久中学校教育研究会長を務める山本校長は「新聞各紙の論調の違いを読み取ることで、生徒の知識に幅が出る。手を伸ばせば、新聞5紙が自由に読める環境はまさに理想的。こういう形で生徒たちの教育環境を整えていただき、ありがたい」と述べ、新聞を手にする生徒の様子を温かく見守っている。
なお、東城陽中は昨年度の「京都新聞小中学生新聞コンクール2019」で学校賞に輝いている。同協議会は市内の他の4中学校にも今後、新聞5紙を無償配達できないか協議する意向だ。