宇治市教育委員会主催の「源氏物語セミナー」が10日、市生涯学習センターで開催された。平等院の神居文彰住職(平等院ミュージアム鳳翔館館長)が、「旅という人の生き死に―宇治と平等院に伝わる旅日記から―」をテーマに講演。約60人の来場者が聞き入った。
神居住職は「人間は移動する生き物」と切り出し、旅をキーワードに、平等院が所蔵する文化財の数々を紹介。江戸時代の地図や、旅のガイドとも言える周遊図などをスクリーンに映しながら、かつて宇治がどのように認知されていたかなどを伝えた。相撲の番付表をまねた天保年間のランク付けでは、神社仏閣では平等院は下の方だが、産物では宇治茶が上位に記されていることも紹介。大正時代からの写真には、鵜飼やホタル狩り、宇治川沿いを走っていた遊覧鉄道「おとぎ電車」もあった。
神居住職は旅を人生になぞらえ、「私たちは大きな出会いの中で生きていく。自分以外の者からの働きかけを、求め楽しむ人生を続ける」と説いた。そして、「宇治、平等院は、ここに来る人のために様々なものを残し続けた。この環境を、残し続けたい」と締めくくった。