【第334号】春到来! 福鳥がつないでくれた人々の環

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【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
東日本大震災から早10年の歳月が過ぎました。2万2千名もの尊い命が奪われ、原子力発電所の事故を誘発した未曾有の自然災害から学んだ教訓が未来に活かされることを信じ、あらためて亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、依然猛威を奮う新型コロナウィルスの一日も早い終焉を願うものです。
3月を迎え、梅の開花に華やぐフィールドからはウグイスの恋歌・初音(はつね)も届いて、コロナ禍の中で合格を勝ち取った受験生たちにエールを贈っています。南の国で冬を越したツバメたちも、門出の時を迎える卒業生たちに「春一番!」を届けるべく日本列島を北上中です。規則正しい自然界のサイクルが、人間社会にも平穏な日常が戻る日も近いことを教えてくれている春の到来です。
水温む季節、木津川漁協の和束川「アマゴの放流」で春本番を迎えたナチュラリスト、今年で10回忌を迎える初代川漁師の父・中川朝清自慢のオリジナルモンドリで、供養となる伝統スッポン漁の記録を留めるべく今シーズンに想いを馳せています。久々に取り出した胴長と漁具に、テンション急上昇で「川開き」の日を楽しみにしている昨今です。
そして現在も尚、コウノトリネットワークのアンテナを張り巡らせ、全国各地のホットニュースに元気をもらっています。ひかりちゃんたちコウノトリの観察に続いては、繁殖期をむかえたケリにチョウゲンボウ、オオタカたちを見守りながら、ジュニアメンバーが発見した大珍鳥の追認調査に奔走するナチュラリストの春本番です。ライフワークとする野生動物と生息環境保全の啓蒙活動を目的とした自然観察会などのイベント開催にも、依然、暗雲が漂うコロナ禍の中、新年度からの再始動・完全復活の願いを込めての活動報告にお付き合い下さい。

◎「春到来!」人の環・フォトレポート

3月1日、木津川漁協の事業「アマゴの放流」が和束川で行われ、昨年度に総代となった筆者も中川幾久夫・支部長と共に参加しました。(写真①②) ここは、昨年の夏に新種登録されたナガレカマツカを発見した所で、やはり希少淡水魚のアカザやスジシマドジョウの生息も確認しています。ヤマセミ(写真③)にカワガラス、カジカガエルやゲンジボタルの生息もまた、和束川が自然豊かな清流であることの証となる環境指標の高い生物たちです。
これらは、和束町教育委員会・町史編さん室から委託を受けた野生生物生息調査の記録として、近く刊行される『~未来に残そうふるさとの自然~和束の生きものハンドブック』で紹介されます。ナチュラリストとして、郷土の自然財産である希少野生生物たちの生息状況を明らかにし、自然環境保全に役立つ基礎資料の作成で貢献できたことは何よりでした。和束町の生き物ハンドブックが、教育現場の環境学習授業に活かされることを願っています。
こうした一朝一夕にはできない生き物たちの調査も、それぞれの分野のたのもしい仲間や協力者あっての賜物です。城陽市に明るい話題を届けてくれたコウノトリ・ひかりちゃんフィーバーも、市役所環境課に事務局をおく「城陽環境パートナーシップ会議」が窓口となって情報発信しています。ひかりちゃん飛来の通報をいただいた第一発見者の呉松暁美さん(写真④左)に同じく情報提供者の和泉悟さん(同右)も、昨年のひかりちゃん見守り隊の丸山令子さん(同中)に続いての新規入会でコウノトリ仲間の環が拡がっています。
やはり協力者の奥田睦和さんの妹で、筆者とは城陽中学校の同窓生・奥田千枝子さん(写真⑤左)にもひかりちゃんが縁で情報提供いただいています。ある日、『先日の雨の夜に、電波塔で眠るひかりちゃんに遠くから車のライトを当てて写真撮っている奴がいた!(兄より)』とのメールをもらいました。その返信、『ボクで~す。雨が降る真夜中に、作品にもならないネグラの記録写真を撮る奴など他におらんやろ!』のオチで大いに受けました。
ひかりちゃん効果は、縁起の良い福鳥にあやかっての恩師表敬訪問となって、共に卒寿を迎えられた宮本英男先生(同中)と津島佐和先生(写真⑥右)のさらなる長寿健康の祈願です。久しくの山本秀子さん(同中)や森田律子さん(写真⑦左)に鈴木隆子さん(同右)たち同窓生との交流で、懐かしい思い出話にも華が咲きました。そうした折、校歌にも謳われる「鴻ノ巣山」ゆかりのコウノトリ・ひかりちゃんの写真を、城陽中学校への寄贈と水度神社への奉納の話が持ちあがってさらなる展開をみせています。
さて、そんな中、3月12日に嵯峨野の広沢の池にコウノトリが飛来したとの情報が入り、山中十郎さん撮影の写真から、ひかりちゃんの1歳年上のお兄ちゃん・かける君であることが判明しました!(写真⑧⑨) すぐに飛び去ったとのことで、城陽市に飛来する可能性もあるとばかりに、コウノトリ仲間たちに一斉ラインしたことはいうまでもありません。
こうした自然界の夢を共有できる仲間の存在がナチュラリストの心をホットにし、活動のパワーをもらっています。コロナ禍の最中にあって、母校・富野小学校の生き物クラブの指導に携われたことは何よりの励みとなりました。今年も巣立ちゆく6年生のエコキッズたちと卒業記念の写真を残すことができ、いつの日か再びこの写真を取り出して成長した彼らを自慢できる時が来ることを願っているロートルナチュラリストです。(写真⑩)

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