宇治橋上流の桜も見頃を迎え、宇治に春の観光シーズンが到来した。新型コロナウイルスの影響を受けながらも観光客の姿が少しずつ戻ってきた一方、「コロナ慣れ」が懸念されている。受入数の増加はリスクと背中合わせとなるため、店舗や観光関係者は感染対策に緊張感を持ち続け、コロナ収束へ〝春の兆し〟を待ち望む。
汗ばむ陽気となった27日、宇治川河畔では、満開となった桜を愛で、散策を楽しむ人々でにぎわった。平等院表参道の観光客からは「やっと、ちょっと活気が戻ってきた」との声も。
市営茶室「対鳳庵」は、新型コロナ感染拡大防止の「緊急事態宣言」期間中いっぱい休席し、今月8日から再開した。検温やマスク着用、消毒、換気などを徹底。茶室に一度に入席できる人数も概ね6人に制限し、飛沫感染防止の衝立も設置している。
再開後も来席者が伸び悩んでいたが、26日に復調の兆しが見えた。引き続き「新たな生活様式」にのっとり開席する。
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観光客に宇治を案内する宇治ボランティアガイドクラブでも、メンバーが感染症対策に細心の注意を払う。
コロナ禍で2度目の春を迎え、案内客数の落ち込み傾向は昨年と変わらないという。かつてはガイド1人で15人ほどを案内していたが、感染防止策で昨年から8人に絞った。
ワクチンの国内供給が始まったが、山本亙代表幹事は「ワクチンを打った人、打っていない人が混在する」現状がガイド時にトラブルのもとになりかねないと懸念。「遠足や修学旅行が回復してくれると、ガイドの活躍の場ができる。早くしゃべりたいのだけれど…」と話す。
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コロナ禍で、宇治川さくらまつりをはじめ地元各地で桜の関連イベントの中止が相次ぐ。大型バスでの団体旅行からグループや家族単位での旅行に移行するなど、花見シーズンの過ごし方や、観光に対するニーズや志向は変わった。
同協会の多田重光専務理事は「イラストマップを持ちながら歩く人も目立ち始めた」と市内の観光地の現状を説明する。その上で「全ての観光が戻ったわけではなく、まだこれから」と指摘。観光需要を押し上げてきた訪日外国人客が見込めない中、特に貸し着物店や免税店の苦戦は深刻で、観光産業や地域経済の回復に向けた打開策を模索する。