コロナ下、暮らし向上へ/京田辺市と同志社・同女大
今後、研究を進める須藤准教授(同大香柏館)

京田辺市は、市内にキャンパスを構える同志社大学・同志社女子大学との連携を強める「ディスカバリーベース」を設置した。教員と学生が、これまでより市内活動を盛んにし、市民との交流も深める。ポストコロナを銘打つ研究支援クラウドファンディングには約165万円が寄せられ、教員の研究費用に充てる。長引く感染禍と新たな生活様式に役立つ実践研究へ期待が高まる。
昨年11月から今年1月まで募集した「ポストコロナ研究支援クラウドファンディング」は、コロナを踏まえた市民生活の向上をテーマとし、1986年に市内にキャンパスを開設して35年の歳月が経つ同志社・同志社女子大学に在籍する教員有志の研究財源が目的。同大には工学、同女大には薬学・看護があり、市内で実証実験する取り組みも期待された。2005年に2大学と連携協力協定を結んだ市は「大学にもコロナ補助があるが、ほとんどが学生向け。研究で使えるものに」と、ふるさと納税を活用した寄付をアピールした。
目標額の300万円には及ばなかったが、48人から164万4000円が寄せられ、1件当たりの上限を100万円に設定し、研究テーマを受け付けた。
同大6教員から応募があり、審査の上、3件を採択した。申請者とテーマは次の通り。
▽グローバル・コミュニケーション学部・須藤潤准教授「住民にやさしい情報発信のあり方とは?―外国人住民の目線から公共の文書・サインを考える」▽政策学部・野田遊教授「COVID‐19感染リスク下における京田辺市と京都府の効果的な連携に関する研究」▽スポーツ健康科学部・竹田正樹教授「密集を防ぎつつ人と人をつなぐ『集団オンラインウエルネスダーツ対戦システム』の構築」。研究費総額は240万7000円で、不足分は市が充当する。

■アフターコロナ 増える外国人

3つのテーマのうち、グローバル・コミュニケーション学部日本語コースで日々、留学生と接する須藤准教授(45)=精華町=は、日本で就職を希望する学生が6~7割といい、小売、流通業界など多方面に卒業生を送り出す。ロシアなど過去の海外生活も踏まえ、「日本はサインや手作り看板が相当多い。必要な人に(意味が)届けばよいが、そうなっていない」と指摘する。
「日本の住みにくさとなってしまわないよう、日本語の使い方を改めるべき」との問題意識があり、この研究では学生とのフィールドワークをはじめ、他国の例も視野に入れた。「留学生と外国人在住者の視点を評価に用い、悩みになっている点を明らかにしたい。コロナ後、外国人労働者はもっと増える」と強調する。市は「変異株が広がりを見せ状況が上向かない中、先行きに希望が持てるような成果を生んでほしい」と背を押す。
市は3月、庁舎内に「基地を通じて新たな人との出会いや気付きを発見してほしい」との願いを込めた「市大学連携ディスカバリーベース」を設置。上村崇市長と教員、学生ら6人で構成するミーティングも年数回予定し、連携の成果や方向性の確認・評価を行い、質の向上に努める。
14~16年に同大、17~20年に同女大に市職員延べ6人が派遣され、人的つながりを強化。市市民部市民参画課地学連携推進室の籏生亮係長は「市民にもベースを使ってもらいたい。区・自治会の夏祭りで学生が余興をし、害獣駆除などの地域のニーズ、困りごとに積極的にかかわるなどフィールドになれば。地元でいつも研究していることが、浸透とまちの誇りにつながる」と未来を見つめる。