平等院奉納プロジェクト実行委員会(山田あかね代表)は今月初め、古来薬草としても重宝された、日本の伝統色・藍を用いたガラスアート作品「鳳凰の卵」を奉納した。宇治市観光協会と宇治商工会議所が後援した。
混乱の世を鎮めて次の世を担うため、平等院の鳳凰が阿字池に産んだ卵…をコンセプトに、コロナ禍終息を願う同プロジェクトが昨年11月に発足。最先端のデザイン設計、本藍染に関わる最高級の原料、そして各界のプロの技が結集した。
約1㍍四方からなるアート作品には、工業デザインが専門のフラワー・ロボティクス㈱=東京都=が参画した。同社代表の松井龍哉氏が、プロジェクトの監事およびガラスパーツの製作ディレクターを務めた。
池の底へと沈んでいく卵の彫刻は、レンズで集光したレーザーを照射し、光学ガラスに微小の彫刻点(ドット)を発生させて作った。細かく重なる泡の流れの中に、手作業では到底及ばない精細なデジタル技術の世界が感じられ、見る者を驚愕させる。
ガラスに挟み込んだ藍布には、高級生糸「小石丸」で作った白生地に、平安以来「京の水藍」として有名な蒅藍(すくもあい)を使用。絹布製作と藍染めは、京都市山科区で本藍染雅織工房を主宰する中西秀典氏が担当した。
5日に開かれた記者会見で、平等院の代表役員・宮城俊作氏は「今の日本や世界の状態に対して、アートやデザインというものが何か貢献できることはないだろうか…という話をいただいたのがきっかけ。あと31年経つと寺自体が1000年を迎える。長い歴史の中で、大事な一つのタイミングではないかと思っている」と話していた。
展示場所は、平等院ミュージアム「鳳翔館」エントランスの通路奥で、期間は12月中旬ごろまでの予定。