宇治市の松村淳子市長は12日、会見を開き、京阪宇治駅北西に整備した「お茶と宇治のまち歴史公園」を8月21日(土)に開園させる、と発表した。歴史公園は国史跡・宇治川太閤堤跡に整備した新たな観光拠点で、宇治茶の魅力と宇治の歴史・文化を発信し、来園者を街中への周遊観光に誘う施設。新型コロナウイルスの感染状況次第では開園時期の見直しもあり得るという。
2007年9月、京阪宇治駅北西で天下人・豊臣秀吉の命令で築造された宇治川太閤堤跡が発見された。ここに久保田勇市長(当時)は新たな観光拠点を整備することを決定。太閤堤の再現に加え、宇治の歴史・文化・観光の情報発信、宇治茶の魅力発信などができる施設を整備することにした。
しかし、山本正市長時代には宇治公民館機能の移転が付随されたため、市議会が反発し、予算を2度〝否決〟。原点となる「新たな観光拠点」の整備に戻すことで市議会の理解を得たものの、開園時期は「2020年春」から大きく遅れる要因となった。
その後、今年6月の開園を目指して事業を進捗させたが、新型コロナウイルスに係る3度目の緊急事態宣言(4月25日~6月20日)が発出されて延期。芝生の施工ミスによる全面張り替えも余儀なくされ、開園時期の検討に影響を与えた。
この日の会見で、松村市長は「8月21日に開園させる。ただ、新型コロナウイルスの流行状況を踏まえて考えたい」と述べ、緊急事態宣言などが発出されていれば開園日の延期、屋外部分のみの供用開始などを検討する方針。松村市長は「お茶と歴史の出発点。山城地域の拠点となるように取り組みたい」と力を込めた。
歴史公園は『史跡ゾーン』、『交流ゾーン』で構成。市は設計・建設・維持管理等の大半を民間に任せるPFI事業を導入した。
史跡ゾーン(約1・4㌶)に関しては太閤堤の復元文化財を展示し、実際に水を張ることで天下人・豊臣秀吉の壮大な護岸事業を当時のスケール感のまま再現。この築堤により、砂州が形成され、水はけがいいことから茶畑が広がった歴史があるため、茶摘み体験が行える茶園などを整備した。
一方、交流ゾーン(約1・1㌶)には「お茶と宇治のまち交流館」(愛称・茶づな)、庭園、広場を設ける。茶づなは宇治の歴史・文化・魅力を発信して市内周遊観光に誘うミュージアム、レストラン、宇治茶体験室、会議室、展望デッキなどで構成。駐車場は73台分で、広場を活用することで最大120台分を確保した。
ミュージアムの入館料は大人600円(小中高生300円)で、20人以上の団体の場合は2割引き。市内在住の70歳以上や障害者は無料(介助者1人含む)となる。
ようやくオープン日時が示された歴史公園。紆余曲折あったほか、コロナ禍で厳しい船出が見込まれるが、宇治に賑わい・発展をもたらせる施設となるか、今後が注目される。