京田辺市松井ケ丘で9日、認知症を想定した「声掛けと見守り」訓練が行われた。同市内では2019年夏、同じく市北部地域の花住坂で初めて訓練を行い、2年半ぶりの実施。高齢化は進む一方、コロナ禍で活動が停滞を余儀なくされたが、再び地域のムード上昇に動き始めた。
京田辺市内でも、昭和時代の住宅開発が行われた順を追うように各地域で高齢化が進んでいる。
中でも、市北部の大住ケ丘で5割、松井ケ丘で4割超の高齢化(65歳以上の割合)率という現実がある。
京田辺市地域包括支援センターが主催する認知症高齢者「声掛け・見守り」訓練は感染拡大防止のため、しばらく実施できていなかった。
松井山手民生児童委員協議会の委員10人をはじめ、同センター、市社協、福祉・介護事業所のスタッフら約40人が参加。
地域で見守ることの意識向上と、高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるよう―に、住民と支援者の連携を強めた。
この日、2回目となる訓練は松井ケ丘公民館と周辺道路を舞台に3つのポイントを設定した。
はじめに、公民館内で認知症について学び、認知症の人への接し方をアドバイス。
「まずは見守る」「後ろから声を掛けない」「目線を合わせてやさしい口調で」「穏やかに、はっきりと」「言葉に耳を傾けてゆっくり」などのポイントを確認し合った。
3人1組となった委員らは順に屋外へ繰り出し、ゴミ出しで分別の種類を間違い・公園で迷う・お金を出せず自販機で買うことができない、の3つのケースに出会う仕組み。
高齢者役を介護事業所のスタッフが担い、訪れた委員たちと会話を交わした。
所在無げにベンチに腰を下ろすおばあさんに委員は「公園までどうやって来はったか、覚えてはる?」「もうちょっと待って思い出せへんかったら、市役所に電話して聞いてみましょうか」などとやさしく語り掛け。
おばあさんは「帰りたい、思てんねんけど」「待ち合わせしてんねんけど」などと終始、戸惑った様子を見せていた。
市高齢者支援課の稲葉弘樹主査(社会福祉士)は「相手の視界に入る。こんにちは、きょうは寒いですね、などと挨拶を。目を見て」と説明する。
民生児童委の宮西信幸さん(72)=松井ケ丘=は「実際の場面で声掛けは勇気が要るだろう。普段、地域で知らない人に声を掛ける習慣がない。話しやすくなるような関係づくりが大切。訓練では、ゆっくりと安心してもらえるように心掛けた」とひと息ついた。
全員が帰着すると感想を述べ振り返った。
稲葉主査は「地域での見守りができるように」と強調する。
同市内では宝生苑(北部)・市役所(中部)・常磐苑(南部)に地域包括支援センターを置き、支援と連帯に努める。