宇治田原町を拠点に活動する新進気鋭のアート作家・新井辰弥さん(35)が、風鈴まつりで賑わう奥山田の正寿院で初の個展を開いている。
会場はハートの猪目窓がある客殿。
クラシカル×モダン=融合なのか、アンバランスな魅力を発するのか…山里の古刹に新たな世界観が持ち込まれた。
同町南で生まれ育った新井さんは幼少時から昆虫を描くのが好きで、大谷高校在学中はHIP・HOPカルチャー&ミュージックに惹かれてグラフィティアートに没頭。
大阪芸術大学で本格的にデッサンや抽象絵画を学び、京都精華大学に編入・卒業後は社会人生活を営む傍ら、ポートレートやアクリル画など幅広い作品を制作。洋服やスニーカーなどのデザインも手掛けてきた。
また、壁画アーティストとしても知られ、自宅をキャンバスにして描いたNBAロサンゼルス・レイカーズの伝説的バスケットボール選手は、SNSを通じて海外でも反響を呼んでいるほか、町内ではラーメン店の迫力満点「ゴリラ」も有名。
宇治田原の四季と自然を描いた「魚定本店」のシャッターアートも反響を呼んでいる。
今回の個展をプロデュースしたのは田原保育所~田原小~維孝館中の同級生で福祉関連事業を展開する南村中西㈱カインドプロ代表取締役の伊藤喜徳さん。
昨年12月には正寿院で人生の節目となる記念日をつくりませんか…という「想い出づくり」プロジェクトも企画しており、中学時代のバスケット部後輩でもある副住職の久野村大寛さんに相談。
大寛さんの父であり、新井さんと伊藤さんを親目線で見守ってきた久野村観光住職が「若い人の頑張りを応援したい」とコラボ展が実現した。
展示されているのはアクリル画、デッサンなど約30点。オリジナルキャラクター商品も並ぶが、中でも目を引くのが射殺された伝説のヒップホップミュージシャン「ニプシー・ハッスル」の肖像画。2018年、ロスアンゼルスで観たハッスルのライブが忘れられずに無我夢中で描いたという。
また、「百姓が生きた汗水は畑に染み込む」という父の生前の言葉を胸に描いた抽象画は、その父が耕してきた畑の土を下地に絵の具を重ね、独特の質感を生み出している。
「これからがスタート。成長の過程を地元の人たちに見てもらいたい」という新井さんの個展は8月16日まで。客殿の開館時間は9時~16時。要拝観料。