名勝『宇治山』を保存・活用/宇治市、来年度に計画案作成へ
検討委員会冒頭、挨拶する松村市長

宇治市は国の名勝『宇治山』の保存活用検討委員会を立ち上げ、第1回会合を22日に市役所で開いた。名勝『宇治山』の指定範囲は、宇治川の右岸(宇治上神社側)のみだが、左岸(平等院側)も含めて議論する方針。今後、現地調査などを経て、来年度中に保存活用計画案を作成し、松村淳子市長に提言する。
2015年3月、京阪宇治駅を出て真正面に見える山裾(市街化区域)において、合法的な宅地開発構想が判明した。市では「山紫水明の宇治川と起伏に富んだ山並みが織りなす宇治の景観美は、万葉の時代から人々に賞賛され、現在も宇治のランドマーク」と開発行為ストップに向けて始動。文化財保護法に基づく『名勝』の指定(18年10月)を受けた後、開発業者の所有する土地を買収した。
名勝『宇治山』の指定範囲は、宇治橋東南岸に連なる仏徳山(通称・大吉山)を中心とする低平な丘陵群の約25万7100平方㍍。朝日山や宇治二子山古墳をはじめ、宇治上神社、宇治神社、興聖寺、恵心院などの宇治川右岸の広い地域となっている。
18年に文化財保護法が改正され、文化財の保存だけでなく、積極的に活用していくための枠組みが示されたこともあり、市は名勝宇治山保存活用検討委員会を設置。22日の初会合で、松村市長が委員委嘱状を交付した。
その上で、松村市長は「宇治は古来より景勝地として愛され、宇治橋から望む上流の景観は、これまで保全されてきた。宇治川右岸の宇治山は、古くから数多くの秀歌が読まれ、江戸時代以降、名所として親しまれてきた。また、宇治川から連なる丘陵の山容は古刹や河畔の風情と相まって、大変価値が高い。しっかりと保ちながら、次の時代につげていくことが課せられた使命。宇治橋から望む川上の景観を、右岸から左岸にかけた一体となった景観として考えていただければ」と求めた。
委員長に選出された増渕徹氏(京都橘大学教授)は「指定範囲は、宇治川の片側に寄っているので、市長挨拶を踏まえ、両岸を念頭に議論する」と挨拶。増渕委員長は職務代理者として、髙原光氏(京都府立大学名誉教授)を指名した。
検討委では今後、現地視察などを行い、本質的価値の検討などを経て、活用の方向性と整備方針などを議論。来年度中に保存活用計画案を作成し、松村市長に提言する。
また、将来的な名勝指定範囲の拡大についても模索。宇治川左岸を含めた議論を深める中、検討する。

名勝『宇治山』の指定範囲と宇治川右岸の景観