コロナ、コロナで様々な行事が中止となり、引き継ぎがなければ、その存続も危うくなる。
「もういいか」「やめとこか」…という空気が広まれば、いつしか火は消え、「あんなこと、やってたなあ」と振り返る時が来る。
こうして文化が一つずつ、なくなっていく。
そうしてはならない…地域の安全、住民の健康を祈る伝統儀式は途絶えさせてはいけない…そんな思いが新春の宇治田原にあった。
■荒木の火「とんど」
荒木では9日、しめ縄や門松、書初めを燃やして無病息災を祈る「とんど」が営まれた。
区、ふれあいサロン、子供会の役員らが協力し、地域の氏神・大宮神社近くの畑を会場に「新春とんど祭り」として晴れやかに開いてきた催しだが、今年も餅つき、焼き芋、ぜんざいなどの振る舞い、お楽しみ「福引」大会などは取り止めとなった。
取り囲む人たちもまばらだったが、その炎は「未来の暖かさ」を伝えているよう。【写真㊨】
奥田豊穂区長は「3年続けて催しが縮小しているが、コロナ収束の折には賑やかに開催できるように」と願った。
■禅定寺では神上縄
そして、禅定寺では9日、大蛇に見立てた「しめ縄」を集落の入口に結び付け、災厄が入ってこないよう祈りを込める伝統儀式が執り行われた。
立川の糠塚、荒木などでは神縄座(かんじょうざ)と呼ぶが、禅定寺では神上縄(かんじょうなわ)と伝わる。
10の隣組(各組平均11軒)で当屋を回すことから、約110年に一度の大役。
今年は東奥谷の西出嘉孝さん(55)が当屋となり、男衆8人が集合。見学に訪れた来年の当屋さんも見守る中、約100束のワラを一心に縫い上げ、長さ10㍍以上の大蛇を生み出した。【写真㊧】
まだ青年団活動が盛んだったころは、出来上がった縄を他の組の若い衆が奪いに来るという荒っぽい風習があったといい、「奪った縄を抱えて田んぼを逃げ回る。それを追いかけまわす…という鬼ごっこのような娯楽行事だった」という話も残っているが、コロナ禍の今では再現しようもなく、静かに穏やかに進行。
最後は「森本橋」西側に立つムクの大木に巻き付け、お神酒を捧げて今年1年の無事を願った。