実験装置で水害現場体感/宇治署「災害警備訓練」
流れ落ちる水で滑り落ちないよう慎重に階段を上がる

全国各地で局地的豪雨が甚大な被害をもたらす中、京都大学防災研究所・流域災害研究センター・宇治川オープンラボラトリー=京都市伏見区=で9日、水害を想定した災害警備訓練が行われた。宇治署管内(宇治市、久御山町)の防災業務従事者が、同研究所の実験装置を使って水害現場の一端を体感し、実際の災害時に備え、各機関の連携も深めた。
近年は気候変動により、自然災害の程度が激甚化。夏には線状降水帯が全国各地で発生するなど集中豪雨の頻度も増し、水害への対応能力の向上は急務となっている。
こうした中、同署が今回の訓練を企画。管内の宇治、久御山の防災担当機関にも呼び掛け、宇治市消防本部から5人、久御山町から2人、同町消防本部から2人、機動隊から7人、同署から9人の計25人が参加。同センター長の川池健司教授が案内した。
参加者はまず、洪水により地下鉄などに流れ込む現場をシミュレーションする「流水階段実験装置(実物大階段模型)」を体験。階段をつたって滝のように流れ落ち、平坦部を進む水の速度は毎秒3~4㍍で水位は約20㌢。地下空間からの避難を想定し、勢いよく流れる水に逆らって約7㍍の平坦部を歩き、高低差3㍍の階段を昇り降り。手すりにしっかりと手を掛けないと体が流されそうになるほどの歩行困難な状況を体感した。参加者の一人は「これだけの水位でも、思った以上に水圧が強い。階段では足元が見えず、手すりがないと踏み外すだろう。高齢者はおそらく無理ではないか」と話していた。

ドアの外の水位は50㌢。全力でドア押し開ける

次に、建物や車の浸水時、ドアにかかる水圧の程度を確かめる「浸水体験実験装置(ドア模型)」を体験。ドア模型の外の水槽の水位を30㌢、40㌢、50㌢と段階的に上げ、開けることができるかを体感。50㌢では約100㌔の水圧がドアにかかるといい、日々訓練に励む消防職員でも全力を出し切らないと困難な状況だった。また車が50㌢の浸水に襲われた時、スライド式のドアは車内からは開けられないことも確認。早期避難の重要性を胸に刻んだ。
同署の佐野太輔警備課長は「実際の現場はもっと過酷だと想像する。私たち救助する側も状況を把握しながら進めないと共倒れになる。きょうの経験を生かし、一人でも多くの人を救える態勢を防災機関で構築したい」と述べ、「これだけの水深だから大丈夫だろうという油断が払拭できたのではないか」と気を引き締めていた。