夏期特別展「山を越えて顕れる仏たち」/9月22日まで・平等院ミュージアム鳳翔館
『祐天開眼山越阿弥陀図』㊧など初出展の資料11点が並ぶ特別展

宇治市の平等院にある資料館「平等院ミュージアム鳳翔館」企画展示室で、夏期特別展「山を越えて顕れる仏たち」が開かれている。阿弥陀如来が臨終者の元へ山あいから来迎してくる「山越(阿弥陀)図」の資料が並ぶ。9月22日(日)まで。

『富士山越阿弥陀来迎図』(写真は平等院提供)

山越図は、阿弥陀仏が雲に乗って現れる一般的な来迎(らいこう)図と違い、その名のごとく「山越え」の様子を描いているのが特徴。阿弥陀仏のみが大きく描かれた物や、脇侍する菩薩たちを従えた物など様々な形態が残っているが、一説には、山上に亡者の魂が宿るという日本古来の信仰が根底にあるとされる。

『日本絵師』源信の項。文末に「是則山越ノ始也ト云々」とある

会場に入ると、江戸時代にまとめられた『日本絵師』の資料がある。当時現存する絵に由来する118人を逸話と共に紹介した書物で、源信(げんしん)の項に「天王寺西門ニ山越ノ弥陀絵像有リ…始也」とあり、源信上人が四天王寺の西門に描いた物が山越図の始まりであることが示されている。

奥のショーウィンドウには、阿弥陀仏の上半身が山間に顕(あらわ)れた「祐天開眼山越阿弥陀図」が置かれている。最も長い縦幅が約2㍍。頭上には念仏が書かれており、実際に臨終の場で使用されたと伝わっている。作者の祐天上人は、江戸時代中期に活躍した浄土宗の僧侶で、名号の書写により様々な寺院の再興に尽力したという。
特別展では11点を展示しており、いずれも初出展。会期中は無休。午前9時~午後5時。入館は無料だが、別途拝観料(大人700円、中高生400円、小学生300円)が必要。