【第374号】侵略的外来生物・クビアカツヤカミキリ 府担当官を招いて防護対策研修会を開催

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【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

当フィールド日記の活動報告が途絶えて久しく、とかく不幸ごとが続いて停滞した上半期も過ぎ、フィールド最盛期の夏を迎えて猛暑・酷暑の中、遅ればせながらのスッポン漁やミナミイシガメの調査などに備えているところです。相変わらずの欲張りすぎた活動計画は、代名詞たる「南山城鳥類目録」と「南山城野生生物生息リスト」の改訂版作成と、コロナ禍で中断した所属学会での研究発表も、『フィールドの女神に愛されしナチュラリスト』の強運を信じ、全国発信のフィード成果を得られることを願っています。

そして巳年の今年、神の使徒・白蛇との出逢いや赤ジムグリに青いヤマカガシの発見を初夢祈願に掲げていましたが、既に「珍蛇御三家」のそろいぶみに、初めて試みた「蛇罠」の効果など、ヘビのご利益と共に京都府の希少野生生物に指定の絶滅寸前種・ナゴヤダルマガエルとヤマトサンショウウオの発見など、日本爬虫両棲類学会大会へのパスポートネタを手に入れて目尻が下がる想いのナチュラリストです。京都市の天然記念物を指定解除された外来生物のミナミイシガメの現状にカジカガエルの生息状況など、来年度の学会発表に向けての課題も視界良好です。詳細報告続報をお待ち下さい。

さて、希少野生生物と共に生態系の攪乱を招く外来生物の生息状況の把握も最重要課題であり、昨年来取り組んできた侵略的外来生物・クビアカツヤカミキリの最盛期を迎え、京都府の担当官を招いての研修会を開催し、桜や梅・桃に壊滅的な被害を及ぼす実態を学びました。今後、京都府南部にも侵入が危惧されているクビアカツヤカミキリの防護対策に、当会が中心となってこれまでどおり情報収集や現地への調査で、各市町村の担当部署や関係諸団体とのネットワーク構築の青写真を描けたことで自然保護団体としての本分を果たせたものと自負しています。

今回の研修会は、城陽環境パートナーシップ会議の年度総会に引き続いてのフォーラムとして開催されましたが、総会の冒頭で4月に亡くなられた芦原昇・副会長を偲んでの黙とうでその功績に感謝しご冥福をお祈りしました。芦原さんは筆者の想いにも応えて、クビアカツヤカミキリ対策の最前線で活動されている大阪府高槻市役所担当部署への視察にも同行頂き、会長を務められていた「宇治田原町エコパートナーシップ」でも警告資料の配布や現地調査にも取り組んで頂いていました。

2003年10月の設立当時からの生え抜きの功労者・芦原昇さんの遺影に、現在最も危機的状況にある外来生物の最前線の活動報告で何よりの追善供養となったものと考えています。次回発行の会報・パートナー通信で、大野和宜・会長が代表して追悼文を掲載致しますが、クビアカツヤカミキリ根絶を願って開催した今回のイベントの報告で、共に防除と啓発活動に取り組んで頂いた盟友への追悼の機会としています。また、職務とは言え、脅威のエイリアン生物に全身全霊で取り組んでこられ、今回の講演依頼にも快諾頂いた河村勇輝氏に感謝の思いを込めての紙面報告、フォトレポートをお届けします。

◎亡き盟友に捧げる活動報告

先ずはナチュラリストの活動母体、「城陽環境パートナーシップ会議」の副会長で今年の4月1日に旅立たれた芦原昇さんの遺影に、あらためての追悼の場となった年度総会の盟友たちとの写真を添えて安らかなるご冥福をお祈りするものです。(写真①②) 昨年の京都環境フェスティバルを始め、クビアカツヤカミキリの啓発の場となった各種イベントでサポートを頂き、被害地の視察にも同行された芦原さん。(写真③④) 今にしてその存在の大きさを知る環境戦士の精神を受け継ぎ、郷土の自然環境保全に貢献できる活動でお応えすべき想いを募らせています。ありがとうございました。合掌。

さて、一昨年来のTVニュースで関東各所において猛威を奮うクビアカツヤカミキリの存在を知り、関西でも大阪府や奈良県など隣接府県で発見され、桜の木などに産卵して枯死させる外来昆虫の侵入に備えての対策を緊急の課題として取り組みました。京都府でもクビアカツヤカミキリの講習会が開催され、その生態や被害の実態を学び、被害木の判定に伐採や防御ネットなどの対処にまで及びましたが、個人には荷の重い難題が山積していました。(写真⑤⑥⑦)

パートナーシップ会議の盟友はもとより、多くのナチュラリスト仲間たちの協力を得て、被害木の現地調査や広く一般の人たちへの聴き取り調査と共に、JAなど関係団体への警告と調査協力の依頼を行ってきました。この間、各種環境イベントなどでも外来生物をテーマにクビアカツヤカミキリの脅威を取りあげ、当フィールド日記での活動報告を配布資料として活用しています。また、実際の被害地の高槻市を訪れ、市の担当者から現地視察での調査と対処法を教えて頂き、先ずは早期発見による被害の拡大を防ぐことの大切さを実感しました。(写真⑧⑨)

当洛タイ新報と共にいち早く特集記事の掲載で協力頂いた京都民報に、わざわざ大阪府の高槻市まで二回にわたって現地取材を頂きクビアカツヤカミキリの危険性を報道頂いた京都新聞など、衆人の目を経たマスコミ報道記事は公的意義を有する文献資料として後世に残る記録です。こうした資料と最新の生き物ガイドブック・外来生物編などを掲示し、クビアカツヤカミキリの活動最盛期でもある6月28日、京都府総合政策環境部自然環境保全課の河村勇輝氏を迎えて、「クビアカツヤカミキリの被害を食い止めるために」と題したご講演を頂き、詳細な資料と写真に標本を前に、参加者一同『今そこにある危機』を実感し、あらためて侵略的外来生物の侵入阻止と根絶への願いを募らせました。(写真⑪⑫⑬⑭)

クビアカツヤカミキリの及ぼす被害木が、令和6年度末時点で自治体が把握できているだけで奈良県・和歌山県で約三千本に八千本、大阪府では約1万本に及びます。京都府でも昨年7月に西京区と向日市で相次いで見つかり、8月には福知山市でかなり深刻な状況でクビアカツヤカミキリノの侵入が判明しました。予防方法として薬剤やネット巻きの効果が紹介されましたが、その諸経費の問題も気になるところです。もし侵入されてしまったら、成虫や幼虫を見つけ次第捕殺することと、被害木の伐採など拡散防止の手段を講じることとなり、地権者や関係者にとっては大変な事態を迎えることとなります。(写真⑮⑯)

もちろんこれまでにも講習会に参加してこれらの現状は把握してきましたが、地元城陽市で関連部署や友好団体と共に京都府の担当官を迎えて危機的状況あるクビアカツヤカミキリの具体的な対策を教示されたことで今後の活動に活かせられることは何よりでした。大野和宜・会長と芦原さんからバトンを受け継いで副会長に就任され浅野和利さん共々、これからも河村さんにはご指導頂き、城陽環境パートナーシップ会議が京都府南部のクビアカツヤカミキリ侵入防護の要となって活動することをお伝えし感謝の言葉としています。(写真⑰⑱) 本来は淡水魚が専門で、京都府のレッドデータブックの担当者でもある河村勇輝さんとは共通の知人も多く、これを機会に我が家名物・木津川産天然スッポン鍋を囲んでの生き物談義を楽しみにしています。ありがとうございました。

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