宇治市源氏物語ミュージアム(宇治東内)企画展示室で、企画展「月の夜にあなたの言うことを信じると言って、そっと抱いてほしい―昂まる古典の魅力―」が開かれている。NHK大河ドラマにヒントを得た企画で、江戸やその周辺で作られた地本(じほん)や錦絵、名所図会などを紹介している。
江戸中期に入ると、定住人口の拡大により、いわゆる「江戸っ子」の文化が盛んになる。多色刷りの浮世絵である「錦絵」が当時の「今」の情報を映す流行物になった一方、閉塞的な社会を皮肉るような戯作が知識人によって執筆され、黄表紙や洒落本などの地本類が普及していく。
時代が進むと、複数の黄表紙をまとめて合冊にした「合巻本」が出版される。同館の恒例展示になっている、江戸後期に出た源氏物語のパロディ版「偐紫(にせむらさき)田舎源氏」はその一つで、全38編のうちの3編を今回展示している。
「偐紫…」の著者は柳亭種彦、画は当時の人気絵師・歌川国貞。架空の女性である「お藤」が物語を書くという設定で、室町時代を舞台に将軍「足利義正」の子「足利光氏」が御家騒動の渦中に活躍。江戸幕府をやゆする面があったため、天保の改革で発禁処分になったという
会場に5枚設置したパネルの中には、国立国会図書館のデジタルコレクションに収められている「黄表紙に描かれる山東京伝と蔦屋重三郎」もあり、当時の姿がうかがえる。
資料59点。蓬左文庫(名古屋市)蔵の地本類は初出展。12月14日(日)まで。11月11日(火)に展示替えを行う。午前9時~午後5時。月曜(祝日の場合は翌日)休館。観覧料は、大人600円、小人300円。問い合わせは同館℡0774‐39‐9300まで。