【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
すっかり秋の空となり、衣替えの季節を迎えても尚、相変わらずの海パン姿で川通いのナチュラリストです。渡り鳥の最盛期を迎え、そろそろ水辺の生き物から野鳥調査にスライドの時節が到来、スッポン漁もいよいよカウントダウンが始まりました。
『最後の川漁師逝く!』と報じられた父・中川朝清が鬼籍に入って8年、反面教師であった親父との唯一の接点が木津川詣での雑多な魚獲りやスッポン漁で、幼い頃からのこうした体験が今日のナチュラリストの原点になっています。父が亡くなる前年に、改良型のオリジナル網モンドリで甲長38.5㌢・体重7.3㌔の日本一の大スッポンを地元・城陽市の木津川で引き揚げ、最後の親孝行を果たしています。
二代目木津川川漁師宣言のナチュラリストに課せられた使命が、一昨年に1㌢更新された日本一の大スッポン捕獲!のリベンジです。そして、その夢を叶える大物も、もう10年来公言している南山城村で見つけた主に続いて、この9月21日には地元・城陽市久津川の古川でも巨大な泳影を目の当たりにして血圧を上げています。
コロナ禍の今年、マスコミでその成果が報じられた岐阜大学でのスッポンの繁殖と飼育実験の研究が中断され、学術研究寄与の大義名分こそなくなりましたが、日本最大級のスッポンがいる「亀の神社」として名高い名古屋市の川原神社に、今年も大物を奉納すべく楽しい漁を続けてきました。こちらは、昨年来の宿題であった城陽市・今池川での「幻の40㌢の大スッポン」に関連して、やはり日本一更新には及ばないものの、かなりの大物をようやくゲットできて溜飲を下げています。
GWに久御山町の古川橋近辺で、カミツキガメ?を目撃した一般の方から交番に通報されたことに端を発し、下流部の巨椋池干拓田に至る流域で追認調査を続けてきました。河川改修の工事の影響で水が濁って思うように調査ができず、やはりカミツキガメの捕獲や視認観察はできませんでしたが、そんな苦労が報われる大きな成果を得ることができました!
9月24日、巨椋池干拓田の古川で捕獲したクサガメが、かつて自身で標識した個体であり、自然界での21年間の経年再捕獲は、やはり筆者が京田辺市で標識したクサガメが轢死体で発見された18年を上回る記録の更新です。新発見と日本一!にこだわりのフィールド派ナチュラリスト、来年度、晴れて「日本爬虫両棲類学会大会」が開催され、これらの成果を檜舞台で発表できることを願っています。
今回、ハッピーライフ・セプテンバーの続編は、新種の淡水魚・ナガレカマツカのお導きのお宝貝・イケチョウガイの話題と、シーズン終了を迎えたスッポン漁・カメ調査の総括です。ロートルナチュラリストの夢が、来シーズンにもつながることを願っての活動報告にお付き合い下さい。
◎続・9月の活動日記
今年の夏、和束川で新種のナガレカマツカを発見できた幸運は、思わぬ人と人のつながりとなって拡がりました。淡水魚調査の頼もしき相棒の林博之先生(写真①右)から聞いたナガレカマツカを新種登録された研究者が、「日本の淡水魚を訪ねて」(写真②)の著者・富永浩史氏で、宇治市にお住いの祖母・木下富美さん(写真③右)から兵庫県在住の孫が魚の本を出版したと進呈いただいたのは16年も前のことでした。
著者は当時20歳の大学生で、高校生時代からの調査・観察の紀行文と写真解説に舌を巻いたのを覚えています。そして今回、カマツカの記載をあらためて読み返すと、既に明確な地域個体差の記載があり、ナガレカマツカ分類の予言書となっていたことにあらためて敬服しました。これを機に、えにしある富永浩史氏を囲んで、少年期からの魚への想いをエコキッズやナチュラリスト仲間に聞かせていただきたいと願っている昨今です。
さて、その木下富美おばあさんは、巨椋池が干拓される前に採集されていたイケチョウガイをお嫁入りの際に持参され、地元小学校の巨椋池の学習教材などに供出されていて、社会人講師として赴く筆者との接点がありました。自慢のお孫さんの魚が縁の巡り合わせで、実に15年ぶりに訪ねて行くや、その貴重なお宝貝を活用して下さいとの申し出に、さすがに責任が重く宇治市歴史資料館の坂本博司・元館長(同左)に委ねました。
こうして木下家の家宝・イケチョウガイが、「巨椋池展」で実績を誇る宇治市歴史資料館所蔵の資料に加わりました。(写真④⑤) もう80年も前に干拓された巨椋池の遺物で、京都府のレッドデータブックでは宇治川で発見される僅かな期待を残して最高ランクの「絶滅寸前種」としていますが、もう四半世紀も見つかっていないことから絶滅の可能性が高いものと思われます。そして特筆すべきは、殻長の最大が25㌢と記載されていますが、この木下貝は28㌢あり、日本最大級といえるでしょう。展示公開の日が待たれます。
スッポン漁では、今年もまだまだ元気な木津川漁協支部長・中川幾久夫さん(写真⑥右)が相棒です。決して大漁ではありませんが、川原神社に奉納予定の30㌢級の大物も、計4匹を確保しています。昨年の「城陽環境PS会議」主催の「今池川生き物採集観察会」で、井手部会長の冒頭での挨拶、『40㌢のスッポンを見ました!』の発言に、日本一更新だぁ~!と探し回るも以後はまったく見つからず、一年越しに10㌢ほど縮んだ片手で持てる奉納用をゲットしてヨシとしました。(写真⑦)
そして、外道のアカミミガメにクサガメはうんざりするほど捕れますが、あやうく放流するところだった最大級の♀のクサガメの甲羅に、標識の穴が空いているのを確認しました。(写真⑧) 果たして、筆者が脇坂英也君と大植登先生、中学生の2人と共に1999年5月16日に巨椋池干拓田の中水路で捕獲標識したものと判明しました。当時の年齢や測定値のなどの詳細記録は、ワープロのフロッピーを起こしての追跡調査は大変ですが、間違いなく自然界における日本最長の経年確認記録と思われます。
早速、京田辺市立培良中学の元教諭で、教え子を伴ってカメの調査に熱心に参加されていた大植登先生宅に報告に行き、標識穴にリングを通して№1077番であることを確認してもらいました。(写真⑨) 当時は不法投棄のゴミにあふれ、ヘドロと汚水の最悪環境にあった巨椋池干拓田を貫く用水路でたくましく生きていたクサガメが、飼育や隔離池でない環境で21年間を経てもほぼ同じ区域に留まっていた事実は驚きの記録です。当時の中学生、藤本君-市井君にも朗報を届け、往年のエコキッズと慶びを分かち合いたいものです。
亀物語のロマンの続編は、将来が楽しみな松井優樹・春樹君兄弟(同右1、2)に託します。いつの日か、この記録を上回る成果を筆者の墓前に届けてくれることを期待しているロートルナチュラリスト、とりあえずは更なる目標に向かって元気でフル稼働の毎日です。