宇治市は22日、第30回紫式部文学賞・同市民文化賞贈呈式、源氏ろまん30周年記念イベントを市文化センター大ホールで開いた。歴代の文学賞受賞者がトークイベントを開き、小説のみならず幅広いジャンルを対象にした文学賞の存続を熱望。山本正市長は「貴重な市民の財産として末永く守り育てる」と約束した。
源氏物語(全54帖)は最後10帖の舞台が宇治であるため、市は『源氏物語のまち』を標榜してきた。1991年度から『源氏ろまん』シリーズとして各種イベントを開催しており、女性作家のみを対象にした紫式部文学賞は最たるもの。今年、節目を迎えたが、新型コロナウイルスの影響でイベントの中止や実施方法の変更を余儀なくされた。
この日、第1部で贈呈式が行われ、山本市長は「紫式部文学賞・同市民文化賞を貴重な市民の財産として末永く守り育てる。女性文学の発展、市民の文化活動の発展に貢献したい」と挨拶。来賓の真田敦史市議会議長が祝辞を添えた。
第30回文学賞を受賞したのは中島京子氏の『夢見る帝国図書館』(文藝春秋)。鈴木貞美選考委員長は「ジャンルが違う中、選考がリモートだったので揉めたらどうしようと思ったが、満票だったので、とても楽だった。ずば抜けた作品で選ぶ方としても幸せ」と述べた。
山本市長が表彰状、紫式部を象ったブロンズ像などを授与。中島氏は「ブロンズ像が、すごく重たい。読者に『読みたい、読みたい』と思ってもらえる小説を書くよう、精進したい」と感想と抱負を述べた。
紫式部市民文化賞は武智由紀子氏が句集『お福分け』で受賞し、表彰状とブロンズ像を獲得。同賞選考委員特別賞は、さくらさち氏の小説『りせっと』、「宇治茶の花短歌会」の合同歌集『茶の花 第十四号』が受賞し、それぞれ表彰状が贈られた。
第2部ではトークイベントが行われ、歴代の紫式部文学賞受賞者である第23回の赤坂真理氏、第24回の森まゆみ氏、第26回の平田俊子氏が登壇。『令和時代に求められる女性文学』とのタイトルで話を繰り広げた。
活字離れが叫ばれて久しい中、赤坂氏は「アニメ、演劇などアクセスしやすいところを見つければ本は読める」と指南した。
紫式部文学賞に関しては、森氏が「地方自治体が出している賞も減っているだけに、文学賞には長く続けてもらいたい。小説対象の賞はあるが、文学賞にようにノンジャンルはない。歌集、詩集とかも受賞しており、引き続きよろしくお願いします」と存続を希望。平田氏も「詩集、歌集は小さい出版社から出る。小さな出版社にも光を当てているのが文学賞。これからも変えないでほしい。選考委員も男女2人ずつでバランスいい。末永く続け、文学賞を目指して書かれる女性作家が出れば」と期待を寄せた。
大阪音楽大学の『ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団』による記念演奏、さらに府立菟道高校吹奏楽部とのコラボ演奏もあり、記念イベントに花を添えた。
なお、新型コロナ感染拡大防止のため、贈呈式やイベントは関係者のみ出席の約200人と規模を縮小して実施。当日の様子は、市公式ユーチューブ『ちはや茶んねる』で第1部は来月上旬に、第2部は年内をめどに配信する。