コロナで量半減、質は上々/城陽酒造 新酒の仕込み本格化
タンク内のもろみを撹拌させる「櫂(かい)入れ」作業

1895(明治28)年創業、南山城地域唯一の造り酒屋・城陽酒造㈱(島本稔大社長)=城陽市奈島=で、新酒の仕込み作業が本格化し、生原酒「たれくち酒」、原酒「にごり酒」が宇治・城陽市などの主要店にお目見えしている。コロナ禍で、飲食店の客はいまだ戻らず、業務用の出荷量が激減。その影響で今年の新酒の仕込みは例年の約半分の量に抑え、杜氏の古川與志次さん(70)は蔵入りを休止。後継者である加藤久典さん(44)が蔵人頭(製造責任者)として同社自慢『濃潤旨口』を堅持しつつ「インパクトのある新しい味わいにも挑戦したい」と意気込んでいる。
城陽酒造の地酒は、蔵内の井戸から汲み上げる豊富な地下水と府内産の酒米を原料に、丹精込めて仕上げる製法が120年以上にわたって続けられている。
新酒の先陣を切る生原酒「たれくち酒」、原酒「にごり酒」は、酒米を府北部の丹後・丹波地域で獲れた「五百万石」100%に限定した人気商品だ。
さらに近年、需要が高まる高級志向の「純米吟醸」も府内産「五百万石」と「祝」そして酒米の代表格・兵庫県産「山田錦」で、今後、順次仕込みが行われる。
今季の酒造りに使われる酒米は、約32㌧(玄米ベース・前年比33㌧減)。清酒全体では、一升ビン(1・8㍑)換算で2万3000本、前年より2万5000本減を見込んでいる。
仕込み量が例年の半分に抑制される原因は、コロナ禍による飲食店の集客減で、業務用のお酒の出荷が伸びないこと。
島本社長は「飲食店に活気が出ないと酒の動きは落ちる。家飲み増ではカバーできない」と、今後も先行き不透明なコロナ感染者の増加の影響を心配する。

搾りたての「たれくち酒」が瓶詰めされ、地元の店頭へ

そんな中、今シーズンも先月1日に『蔵入り』、25日から酒米を洗い始め、酒造りを開始。仕込みの量が半減することに伴い、杜氏の古川さんは酒造りを休止。後継者の加藤さんら6人の若い精鋭たちが、毎朝4時30分から酒米を蒸したり、タンク内のもろみを撹拌する櫂(かい)入れ、ビン詰め、ラベル貼り、出荷作業…と大忙しの日々を過ごしている。
この作業は、例年より約1カ月早い来年2月20日ごろ終了予定だが、杜氏や蔵人らは年末や正月休み返上で酒造りを極める。
8月猛暑の影響で「今年の酒米の出来はやや粒が小さく、良いとは言えない」(島本社長)だが、そこは6年前から本腰を入れて、古川杜氏のもとで酒造りを教わってきた加藤さんらの若い情熱で、インパクトのある味わいに仕上げている。
今月21日から地元の主要酒店に並んだ新酒の価格は、生原酒「たれくち酒」2400円、原酒「にごり酒」2200円=いずれも1・8㍑入り・税別=。720㍉㍑入りはその半額で販売されている。値段は昨年と変更なし。ぜひ、出来たて・搾りたての新酒を、そのまま瓶詰めした雑味のない味わいを楽しみ、この時期はお歳暮として贈るのも良いかもしれない。
なお、仕込み量の減少とコロナ感染予防の観点から今シーズンは『酒粕詰め祭』は取りやめ。ただ、酒粕の販売は直売所などで始まっており、問い合わせは同社℡0774‐52‐0003まで。