【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
年の瀬を実感する電飾とジングルベルの音に急き立てられ、今年もコロナ禍で低迷したナチュラリストの活動を振り返っています。
昨年来、ライフワークとする自然環境保全と希少野生生物保護の為の啓蒙活動と位置付ける自然観察会や環境イベントなどがことごとく開催中止となり、永らく続けてきた魚やカメなどの水辺の生き物採集観察会にカエルの生息調査観察会、昆虫採集にバードウォッチングまで中止の憂き目に、本来がポジティブ思考のナチュラリストも活動機会を逸してコロナ鬱が募りました。そして、年間最大行事である関連学会での研究発表も大会の中止やリモート開催とあいまって、京都府最大の環境イベントである年末の「京都環境フェスティバル」も早々の中止決定に至っては、ナチュラリストのフィールド調査の意欲もそがれるというものです。
今年の上半期、久御山町の鳥・ケリが小学校のグランドで繁殖成功した朗報をお伝えしましたが、NHKの「さわやか自然百景」でも当地のケリの取材が決まっていました。そんな楽しみな企画も、二年連続コロナでの中止となり、来シーズンこそはと期待しています。また、シュレーゲルアオガエルの研究の調査協力の依頼をいただいた和歌山県立医科大学の茂里康先生に、歴史文献の古典資料からカメ類の研究をされている日本大学の後藤康人先生の現地視察の機会もコロナによって見送られ誠に残念でした。
そして、日本一の大スッポン捕獲のリベンジ!を公言する二代目木津川川漁師も、我が家名物・天然スッポン鍋を囲んで生き物談義に華が咲く「自然の恵みの会」の開催もままならず、スッポンの飼育実験に供給してきた岐阜大学での研究も中断され、需要がなくなったスッポン捕獲の大義名分もなくなりました。かくして、今年はついぞ出漁することなく30余年間続いた伝統漁が途絶えたシーズンでした。
こうした負の連鎖の中にあって、ナチュラリストのコロナ鬱症候群をいやしてくれる数少ないイベントの開催には救われました。相変わらずの熱心さで生き物情報を届けてくれるナチュラリスト仲間たちと、当洛タイ新報や活動母体の城陽環境パートナーシップ会議に寄せられる一般市民の方々からの情報にも大いに元気付けられました。
城陽環境PS会議主催の最重要イベント「第20回記念城陽市環境フォーラム」に続いての『城陽の宝もの見つけた! ぼくの、わたしの生きもの作品展』の取り組みは、理科離れが報じられる昨今、夏休み恒例の昆虫や植物の「宇城久採集会」もなくなり、子どもたちの自由研究の発表の場として開催されたものです。子どもたちがふるさとの生き物たちを知り、観察する眼を養い、学習することを目的とした主催者側の想いに応える作品が勢揃いしました。
復活ナチュラリストの、多分に身内びいきとなった報告、ちっちゃな大発見物語・フォトレポートにお付き合い下さい。
◎夢を受け継ぐ子どもたちに元気をもらって
7月3日、城陽環境PS会議主催の「昆虫標本作成研修会」が開催されました。(写真①)依然コロナの不安が高まる中、募集人数も限定8人とし、昆虫ガイドブック編集中の山村・竹内両運営委員に外部講師の野村・山崎両先生を招いての専門的な研修会とあって、標本の材料にはカナブンを用いましたが、今後の標本作りに役立ててもらうべく飼育用にノコギリクワガタやヒラタクワガタなどを進呈して喜ばれました。
そして、8月7日には、昨年は中止を余儀なくされた太陽が丘・夏休み夜の昆虫観察会も開催することができました。(写真②) 例年大人気のライトトラップと昆虫採集によるイベントには、申し込み初日の午前中には定員オーバーとなり、一昨年は250名もの参加者を受け入れ、講師陣も大動員しました。今年も参加者60名に余りあるクワガタ・カブトムシを相棒の虫キング・西森名人と共に事前に採集してお土産に進呈しています。
それでも残った大量のカブトムシ(写真③)を、以前に園児たちに生きた教材のヘビやカメを披露して生き物のお話をした地元城陽市の里の西保育園に寄贈したことから新たな話が始まります。夏休みの終わりに、太陽が丘で園児たちと保育士さんに、バッタなどの生き物に触れ合う観察の指導を石田実理事長から賜り楽しみにしていましたが、程なくコロナの猛威で太陽が丘も閉鎖され叶いませんでした。
そんな伏線を経てのPS会議主催の生きもの作品展が、12月10日に文化パルク城陽の市立図書館で始まりました。(写真④) 応募対象の小学生たちのそれぞれに素晴らしい作品が展示されている中、『小学生・園児が一生懸命に作った作品です…』の記載が見られます。(写真⑤) 今回の作品展にお宝昆虫の発見で急きょ特別出展の栄誉に輝いたのは、里の西保育園からの「オオゴキブリ」と「マイマイカブリ」です。(写真⑥)
憎っくきコロナにバッタやコウロギ・キリギリスの秋の虫たちの季節さえタイムリミット寸前となった11月4日と5日、里の西保育園のゆり組年長さんとは太陽が丘に繰り出し、あやめ組年中さんとはロゴスランドの鴻ノ巣山のふもとで生き物観察を楽しみました。(写真⑦⑧) そしてそして、それぞれに特筆すべきお宝生物の発見があり、孫世代の後継者発掘にフィールドの神様の後押しを感じる嬉しい出来事と、今後の展開に期待しているロートルナチュラリストです。
科学論文「京都府南部におけるオオゴキブリの採取と飼育」を検索し、研究者チームが数年間かけて探索しても発見できなかった経緯を知ればその希少性も分かることでしょう。(写真⑨) マイマイカブリでは、4月18日に放映された人気科学番組「所さんの目がテン」において、『専門家が驚くマイマイカブリをゲット』のくだりがあり、貴重な昆虫発見を讃えています。(写真⑩)
季節外れのフィールドで、科学者が認めるお宝生物を発見した強運エコキッズたちの成長を、楽しみに見守って参りましょう。