世界遺産の平等院(宇治市宇治蓮華)で、夏の訪れを告げる「平等院蓮」が開花した。昨年よりもやや遅い開花となった〝奇跡の白蓮華〟。8月初旬までが見頃という。
1999年に鳳凰堂前の阿字池で発掘調査を行った際、地層中から見つかった種をもとに、市植物公園の協力を得て2年がかりで開花にこぎつけた、同所のみで咲く「平等院蓮」。
地層の年代は江戸時代後期と推測され、実に200年以上の眠りから覚めた、神秘の花。つぼみの状態では先端が紅色で、開花すると純白に変わる珍しい品種。他の蓮と混ざらないよう信楽平鉢で栽培されている。
鳳凰堂の本尊・阿弥陀如来坐像の背面にある壁画「仏後壁」(国宝)にも、平等院蓮を思わせる蓮の花びらが描かれている。
今年は4月下旬から5月上旬にかけての低温の影響で、昨年と比べて生育が遅れたが6月の最終週からつぼみが順調に膨らみはじめ、清楚な白い花びらを開かせた。
報道陣には2日に公開。神居文彰住職は「たった一粒出てきた種を世界遺産の中で開花させた。奇跡的にもう一度愛でることができる。1000年続いていることが、鳳凰堂の絵画の中でも確認できる」と話した。
午前8時30分の開門と同時に続々と観光客が訪れ、鳳凰堂を背景に、蜜を求めてハチが飛来する瞬間も狙いながら、1000年の息吹を写真に収めていた。
境内では平等院蓮を含め、約15種類55鉢が観賞できる。庭園は午前8時30分~午後5時30分まで。拝観料(大人600円、中高生400円、小学生300円)が必要。