【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
今年は2月の「京都環境フェスティバル」の開催にあわせて、城陽環境パートナーシップ会議では侵略的外来生物・クビアカツヤカミキリの警告と「城陽生き物ガイドブック・外来生物編2025」の完成披露を行いました。京都府における最大の環境イベントにおいての活動成果の発表は、年間最重要課題と位置付けて2010年度の「城陽生き物ハンドブック」から今回のガイドブック・第6弾まで、コロナ期間を除いて郷土の希少野生生物の最新情報を携えての発表を続けてきました。
今年もフェスティバル後、各種イベントで新作ガイドブックの有効活用を行い、6月28日の総会後のフォーラムで、京都府自然環境保全課のクビアカツヤカミキリ担当官・河村勇輝さんをお招きし、市内外の関係者たちに被害の最新情報と防護対策を学ぶ研修の場の設定で責を果たしました。こうした城陽環境パートナーシップ会議の年間行事の中でも、広く地球環境の問題から郷土の自然遺産である希少野生生物の保護と生息環境保全の実践の成果を公表できるイベントは、大切な啓蒙の場として総力で取り組んでいます。
7月からの「水辺の生き物採集会」や「サイエンスキッズ夏まつり」に「太陽が丘・夜の昆虫採集会」など、夏休み恒例のイベントももう10年以上続けています。郷土の環境資料となる野生生物生息リストの作成では、日常的なフィールド探査と情報収集から特筆すべき事項はマスコミ報道などで公的意義を有する記録とすることを心がけています。コロナ禍以降、所属する学術会議での研究発表は途絶えていますが、それにも準ずるエキスパートたちが集う市民に開かれたイベントがありました。
「きょうと生物多様性センター」主催、京都府や京都市など共催の「きょうと☆いきものフェス! 2025」で、野生生物の保護や自然環境保全に携わる府内90もの自然保護団体が集い、9月27・28日に京都府立植物園で開催されます。ここではブース展示やワークショップ、活動報告会に自然観察会など2日間にわたって多彩な催しがあり、情報交換の交流の場となる一大イベントです。城陽環境パートナーシップ会議の活動成果の発表のひのき舞台と位置付け、様々な活動家の人たちとの出会いと学びの機会となる生きものフェスへの参加を楽しみにしています。
ブースでは、城陽生き物ガイドブックの外来生物編と淡水魚編を掲示し、ハンドブックなど展示関連資料をそろえて解説と質疑に応じます。また、魚類のアドバイザーである林博之・府立菟道高校教諭と科学部の研究発表もポスター掲示しています。28日の午後には活動報告にもエントリーし、希少野生生物と共に外来生物への取り組みを紹介し、来場者にガイドブック・外来生物編と関連資料の配布を行います。
この機会に、植物園の花々を楽しみながらご参加いただければ幸いです。いきものフェスでの発表の要旨と酷暑の夏の活動報告をご覧下さい。
◎京都生きものフェス 活動報告
城陽市が市民団体・事業者などと協働して設立された「城陽環境パートナーシップ会議」では、郷土の自然財産と位置付ける希少野生生物の保護とその生息環境の保全を掲げ、フィールド調査と啓蒙活動を続けてきました。2010年に「城陽市生き物住民登録」と題して市民からの情報を募り、各分野の専門家の先生方の監修を経て、A6判64頁の「城陽生き物ハンドブック」を作成し、環境学習指導や自然観察会で配布資料として活用してきました。以後、改訂版2014に動画を取り入れたDVD版2015を作製し、2018年度からはよりハンデ
ィなガイドブックの要請に応え、「希少生物編」から植物編・昆虫編・キノコ編・淡水魚編から最新2025年度版「外来生物編」までシリーズ第6弾を数えています。
今回、ガイドブックと関連資料を配布資料に、希少野生生物の生息状況の概要とクビアカツヤカミキリの防護活動などを紹介し、広く情報提供の協力を呼びかけ、生態系を撹乱する外来生物根絶への理解と支援の環が拡がることを期待しています。
【写真①】きょうと☆いきものフェス! チラシ
【写真②】城陽生き物ガイドブック・外来生物編2025と添付ポストカード
【写真③】城陽環境PS会議製作のハンドブックとガイドブック
【写真④】府立菟道高校科学部の「ヌマチチブにおける寄生虫」の研究発表
◎活動フォトレポート
先ずは最新クビアカツヤカミキリ情報です。最盛期を迎えても近隣からの情報が無くひと安心の7月16日、滋賀県・湖北野鳥センターの植田潤氏から地元で成虫が発見されたとの一報が届き、ついに近畿全府県に拡がった桜と共に梅や桃への壊滅的な被害を及ぼす侵略的外来生物の侵入は、地元にとっては死活問題に発展します。あらためての警戒と継続調査が必要との思いも、今年の酷暑と膨大な樹木の地味な調査に調査仲間たちへの協力要請もはばかる中、8月31日に京田辺市で40数本の被害木が見つかったと京都府環境保全課のクビアカツヤカミキリ担当官・河村勇輝さん(写真⑤左2)から一報が入りました。
幸い成虫は発見されず、樹木の中に巣くう幼虫を薬剤処置で対処するなど、早期発見による防護対策が功をなして大きな騒ぎにはなりませんでした。5年目にしてコロナ感染の洗礼を受けて1週間も静養を余儀なくされた反動から、早速、被害地近隣に飛散していないかの追認調査を行って、フラスと呼ばれる痕跡も見当たらずホッとしています。成果無しの徒労に終わった分、逆にストレスも溜まって外来生物バスターで貢献とばかりに張り切るナチュラリストに、アンラッキーが続きました。アライグマには罠を破壊されて逃げられ、ヌートリアではスッポンモンドリを修復不可能にまで喰い破られ、アカミミガメに至っては不覚にも皮膚を喰い破る咬み傷を負わされる始末です。
更なる不幸は、かつて川底の古クギを踏み抜いて入院の憂き目がありましたが、海パン姿で川辺のブッシュもいとわない脚の傷はフィールド派ナチュラリスト自慢の勲章でもありました。ウルシにも免疫があって、大抵の虫や草花にもかぶれたこともない野生育ちが、突然の自然界からのしっぺ返しで脚から背中・首にまで発疹が拡がり猛烈なかゆみに襲われ病院に駆け込みました。発熱が無く、マダニや野生動物からの感染症は低いと思われ、かゆみ止めの薬で抑えながら検査結果待ちの中でいきものフェスの準備をしています。
さて、本紙9月6日号で一部報じて頂いた通り、京都府の希少野生生物に指定の絶滅寸前種・ナゴヤダルマガエルや、珍蛇御三家のジムグリにシロマダラ・タカチホヘビの発見など、今年も大きなフィールド成果が得られています。林博之先生(写真⑥左)との木津川魚類調査では、5月に玉水橋下流で初めて捕獲確認した地球温暖化の指標生物・ゴクラクハゼ(写真⑦)が、7月には最上流部の笠置町でも捕れました。また、ここでは早朝にアカショウビンの声が隣接の森から聞こえ、数年前に繁殖確認された南山城村以来の幻の鳥の新たな生息確認地に追加です。
また、外来生物の残念な記録では、ブラックバス・ブルーギルに次いでコクチバスとアメリカナマズの幼魚(写真⑧)が捕れて繁殖の実証です。水辺に残された足跡からは、アライグマにヌートリア、ハクビシンにイタチ、テンと思われるものもありました。罠猟師としてアライグマなど外来生物の駆除に貢献していますが、在来生物といえども増えすぎたシカにイノシシ、サルの実害は社会問題で、クマの目撃情報が追い打ちをかけています。
またアライグマの駆除と共にスズメバチなど危険生物への対処も猟友会で請け負っていますが、今年は荒見神社でマムシが出るとのことで、ヘビ罠を試したところ即かかりました。早速、本紙紙面でも警告記事を掲載して頂き、立て看板と立ち入り禁止区域のロープを張って蛙を餌に続けたところ、計4匹のマムシと2匹のヒバカリが捕れ、危険のないヒバカリは青山浩然宮司(写真⑨中)と共に放しています。荒見神社は昔から白蛇の目撃例があるところで、餌を野ネズミにすることで捕獲が期待されます。神の使いとされる白蛇を鎮守の森で捕獲を試みるのは罰当たりでしょうが、安全に捕獲できる箱罠で奇跡の生命を披露できたらと思っています。そして、餌の確保にネズミ捕りを仕掛けたところ罠が破壊されてヘビ罠にも被害が及びました。
これはアライグマの仕業との検討をつけるや、ここでも親子3匹が罠にかかりました。(写真⑩) 雑食性の彼らはマムシでさえ捕食するといい、駆除する前にひと働きしてほしいものです。こうした活動の相棒のひとり、PS会議とハンター仲間の本城隆志市議(同⑪右)は、プライベートな問題と選挙で大忙しの中でも駆け付けてくれ、貴重な現認者となってくれています。
同じく自然観察会の講師としても欠かせない40年来の鳥友・竹野功璽さんは、今年も南山城村での調査で産卵中のダルマガエル(写真⑫)の発見とカジカガエルの生息確認、太陽が丘で珍蛇・ジムグリの捕獲に宇治の森林公園ではタカチホヘビの屍(写真⑬)発見などで貢献してくれています。また、太陽が丘の夜の昆虫採集会では、PS会議の岡井昭憲先生や千田真大君たち講師陣と共に、参加者の寺田小学校のユイト君(写真⑭中)が発見した新たな外来昆虫・ムネアカハバヒロカマキリを確認し、追跡調査が始まります。
コロナ禍以降、ナチュラリストの活動の場が限られ、ライフワークとするフィールド探査も停滞していましたが、これら多くの人たちの協力で光明も見えてきました。人生の第4コーナー、残された時間を郷土の希少野生生物の意義ある記録を残せるべく、きょうと☆いきものフェス!に参加してリフレッシュ。多くの人たちから元気をもらってきます。














