【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

新春紙面『ナチュラリストからの年賀状』に続き、あらためて新年おめでとうございます。
今年も郷土の希少野生生物たちのメッセンジャーとして、「城陽環境パートナーシップ会議」と「環境生物研究会」の仲間たちと共に、自然環境保全の啓蒙活動とフィールド探査で貢献できることを願っています。昨年の暮れから取組んでいる和束町の鳥類目録の改訂と野生生物の生息リストの編集もほぼめどが立ち、今年も日本爬虫両棲類学会での研究発表を予定しているカエル類の調査に奔走しています。
アカガエルの仲間は、冬眠中に一時的に目覚めて産卵する習性が知られており、昨年来南山城地方全域を巡って繁殖状況を調べています。厳冬期の一月・二月、野鳥の観察と足跡などフィールドサインによる動物たちの生息記録を確認しながら、ニホンアカガエルとヤマアカガエルの卵塊の発見に努め、水温む季節までヒキガエルやカスミサンショウウオの調査が続きます。
フィールド調査と共にライフワークとする啓蒙活動の幕開けは、今年も母校・城陽市立富野小学校「いきものクラブ」の指導で始まりました。城陽環境PS会議が一昨年に作成した「環境かるた」を事務局から持参いただき、ミニかるた大会で成績優秀者への賞品に「城陽生き物ガイドブック」に同ハンドブックを進呈しています。正月定番のかるたですが、啓発を目的として作られた城陽市の環境かるたは、これからも大いに活用していきたいものです。
今回、鳥への想いを詠んだ「愛鳥いろは歌留多」を紹介する機会としました。もう20余年も前、畑違いの文学関連の機関誌からの依頼で野鳥の連載記事を執筆していた折の新年号に発表したもので、商品化の話もあった懐かしい作品の蔵出しです。環境かるたに続く愛鳥かるたも制作し、啓発活動に役立てられたらなによりです。
いにしえ人の風流にならった「いろは歌留多」も、現代流の五十音順として最後の「京」の札は残しました。ここはやはり、無粋な解説も必要かと末尾に添えています。野鳥をとりまく環境問題を視野に、郷土の代表的な鳥たちを俳句調の頭韻を揃える工夫で詠んだ労作に込められたメッセージに耳を傾けて下さい。
尚、野鳥写真は山中十郎氏(Y)、岡林猛氏(O)の作品を使用しています。

◎愛鳥いろは歌留多

あ アオバズク 神社の杜が マイホーム
い イソシギが 集う水辺も ゴミヘドロ
う ウグイスの 初音が運ぶ 春一番(ウグイスの初めてのさえずりは、桜前線より約一ヶ月早く、京都市では2月末、城陽市の木津川河川敷では例年3月1日です。)
え 枝に架ける エナガの巣材 クモの糸
お オオタカが 舞う里山を 次の世に
か カイツブリ 鳰(にお)の浮巣も 新建材(別名の鳰は、水に潜る様を表しています。)
き キジ鳴きて 弾に追われし キジ泣きて(国鳥のキジが、狩猟鳥にも指定されているのは世界でも希なことです。)
く 嘴の 形に学ぶ 鳥の餌
け ケリ育つ 優良農地の 安全米(農薬の影響の少ない、餌となる小動物が豊富な水田地帯を好んで繁殖するケリは、優良な農耕地環境を表す指標鳥とされています。)
こ コミミズク 薄暮の巨椋に 風の舞(華麗な飛翔で野ネズミを狩る巨椋池干拓田の冬の風物詩・コミミズクも、今や絶滅危惧種となってめったに見られなくなっています。)
さ サンコウチョウ 月・日・星と ホイホイホイ(三光鳥の名前の由来となった鳴き声です。)
し シンジュウカラ 庭の餌場の 皆勤賞
す スズメ喰う 米を上回る 稲の虫(かつての害鳥の代名詞は、実は益鳥だった!)
せ セグロセキレイ 世界に誇る 固有の種
そ 双眼鏡 野鳥の姿 手に取るように
た タマシギの 父さん育児に 専念し(野鳥では希な一妻多夫の鳥です。)
ち チドリ足 子育て河原に 轍跡(木津川の河原で営巣するチドリ類の巣卵が、オフロード車の被害に遭っている現状報告が国を動かし、繁殖環境保全の成果を得ることができました。)
つ ツグミ待つ 禁制の猟具 カスミ網(かつてはヤキトリの代名詞となっていました。)
て テグスにて 傷つく野鳥 あと絶たず
と 都市鳥の ドバトは環境 適応種(帰化鳥として世界中に拡がったドバトは、生態系を乱す負の環境指標鳥として、唯一マイナス評価点が与えられています。)
な 夏鳥は 日本生まれの 南国育ち
に 日本でも 十指に余る 絶滅鳥(野生絶滅のコウノトリとトキは、人工繁殖によって自然界に復帰を果たしています。)
ぬ ヌエの声 正体見たり トラツグミ
ね ねくら入り ツバメのお宿 葦の原(巣立ちしたツバメたちは、宇治川河川敷の葦原にねぐらをとって秋の渡りの時期までを過ごしています。)
の ノビタキも 旅の途中に 羽休め(北方で繁殖し、南方で越冬する渡り鳥が旅鳥です。)
は ハシブトと ハシボソに分け 里ガラス
ひ ヒヨドリが 山野を捨てて 都市鳥に
ふ 福招く フクロウ森の 哲学者
へ ベニスズメ 籠脱け・群れて 帰化鳥に(野外で繁殖定着した籠脱け鳥が帰化鳥です。)
ほ ホオジロの 名に偽りの 黒い頬
ま 真ん丸に マガモ育てて アヒルにし(マガンはガチョウの原種でありながら、英名では野生のガチョウと本末転倒の名前で呼ばれています。)
み 密猟に 実刑判決 禁固八ヶ月!
む 群がりて ムクドリたちが ねぐら入り
め 鳴鳥と 呼ばれしメジロ 籠の鳥(かつてさえずりを競う会が開催され、優良鳥は高額で取引されていましたが、現在は和鳥の飼育が厳しく規制されています。)
も ものまねで 百のさえずり モズの求愛(漢名・百舌鳥の由来になっています。)
や ヤマガラは 巣箱好みの おみくじ鳥(おみくじ芸は必見!検索してみて下さい。)
ゆ ユリカモメ 和歌に詠まれし 都鳥(ミヤコドリという別の種類がいます。)
よ 夜の闇 ヨタカの声が 響く森
ら 落鳥を 親身の世話で 野に返し(鳥獣保護法や鳥インフルエンザなどの問題もあり、傷病鳥の保護は専門家に託しましょう。)
り 留鳥は 生まれも育ちも 郷土の野鳥
る ルリビタキ 枯れ木彩る 青い華
れ レンジャクは 緋色・黄色の 宿り木鳥
ろ 労せずに 餌にありつく 餌付け鳥
わ 渡り鳥 星を頼りに 旅立ちぬ(体内時計も天空の賜物とのことでした。)
を オシドリを 夫婦の鑑と 迷信信じ(オシドリは乱婚で、毎年ペアを変えています!)
京 京女シギ いずれが真偽か 狂女シギ(あでやかな顔の模様から、京女の華やかさと、化粧崩れの狂女の由来説の二つがあります。)

【写真①】厳冬期に産卵するニホンアカガエル(撮影・脇坂英弥)
【写真②】サイエンスキッズ・松井優樹君は、フィールド調査の貴重な戦力になっている。
【写真③④⑤】城陽環境PS会議が作成した「環境かるた」を使って、城陽市立富野小学校「いきものクラブ」の部活始めはミニかるた大会です。来年度は、「野鳥かるた」を披露できることを願っています。
【写真⑥】鳥類目録の表紙画に提供いただいた富士鷹なすびさんのケリ。これらの作品が絵札を飾れば、最高に楽しい野鳥かるたになることでしょう。
【写真⑦】キジ・Y
【写真⑧】タマシギ父子・Y
【写真⑨】コミミズク
【写真⑩】サンコウチョウ・O
【写真⑪】ミヤコドリ・O

【第285号・PDF版はこちらへ】