【第300号】瑞祥の福鳥・コウノトリ詣でのお正月日記

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【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
今年も本紙の新春紙面「ナチュラリストからの年賀状」のご挨拶で一年が始まりました。フィールドの初夢祈願を綴って今年で19回目を迎える2020年、再度のリベンジを公言している「日本一の大スッポン捕獲!」をはじめ、賞金総額3億円超の幻の怪蛇・ツチノコを発見して「フィールドの女神に愛されしナチュラリスト」として有終の美を飾りたいものです。
さて、昨年はフィールドでの不運なケガもあって決して満足のいく一年ではありませんでしたが、年末の12月半ばになって「瑞祥の福鳥・コウノトリ飛来!」の朗報が届き、嬉しい厄明けの新年を迎えることができました。爬虫類派を冠とするナチュラリストも、冬眠の季節を返上して鳥人ナチュラリストにUターン、福鳥も期待に応えて長期滞在してくれ、未来につながる調査資料の一部を残す機会を得ています。
野生絶滅から復活を果たして15年を経たコウノトリの観察は、一過性の迷行記録の飛来報告さえも貴重な資料として求められている現在、こうした餌の乏しい季節における越冬記録は、今後餌場環境として定着する可能性もあり、稀な冬鳥から一年中生息する留鳥として、やがては繁殖に至ることも十分に考えられる日本の鳥類史上の歴史に残る好題材がふるさと城陽の地で展開されているのです。
当初は短期の飛来記録の報告と軽く考えていましたが、初確認からひと月を経てコウノトリの活動パターンも定着化してきたことから、あらためて本格調査に乗り出しました。鳥類研究者といえども、どのようなスタンスでコウノトリを取り巻く課題に対処するかは正解の無いクイズと同様、見通しもつきません。一例を挙げれば、野鳥保護を願う愛鳥家として国際希少鳥類の定着を願っての餌付け行為を提唱しても、地権者など第三者への理解と協力といった配慮の他、バードウォッチャーや研究者たちからも賛否両論様々な声が寄せられることでしょう。
コウノトリのキャッチコピー「瑞祥の福鳥」と同じく、昔から「瑞祥の霊亀」と称され元号にも名を残す甲羅に緑毛をもつ蓑亀を木津川で発見し、「城陽生き物ハンドブック2010」の裏表紙で紹介しています。このハンドブック作成の際に、水度神社で繁殖するフクロウの巣立ちなど、ふるさとの生き物たちの映像を市役所ロビーで放映して広く市民の方々からの情報提供を呼び掛けるキャンペーンを行いました。果たしてその効果たるや、平日から400人ものバードウォッチャーが水度神社に押し寄せ、警察まで出動する大フィーバーとなって、10年を経た現在も繁殖期には多くの愛鳥家たちが観察に訪れています。
こうした野鳥の生活に少なからず影響を与える観察や写真撮影も、愛鳥家ならではのものであり、たくさんの人たちに見守られその生態を記録される鳥たちは実に幸せ者です。縁ありて我が町・城陽市に飛来したコウノトリの生息状況を記録することは、ナチュラリストの務めであり、同好の志である鳥仲間からの情報と記録写真を得て、地名にその名を残す「鴻ノ巣」の夢が成就する孫の代、ひ孫の代に届けるタイムカプセルの作成で郷土の環境資料・野鳥史に貢献すべく充実した新年を迎えています。
この間、コウノトリの絶滅と野生復帰に至る詳細記録を再確認すべく専門書を読破し、生態や古典のいわれなど多くのことをあらためて学び直しています。これら学術的価値の高いコウノトリの変遷と越冬生態の報告はさておき、新年第一弾の連載300回記念号にふさわしい「後光射す瑞祥の福鳥」と「水鏡」のベストショット2点の写真を掲げ、コウノトリ調査グループの仲間たちとのエピソードで綴るフォトレポートをお届けします。

◎写真で綴る活動報告

先ずは自慢の写真をご覧下さい。あえて天地を逆にした「水鏡」と、満月を背景に後光射す「月影」の作品は、「城陽市鳥類目録」に209種類目として追加掲載されたコウノトリの生息を実証する資料写真の中でも、特別な想いが込められた秀作です。(写真①②)
人工飼育されたとはいえ、警戒心が強いコウノトリを田んぼ一枚隔てて観察できるなど、他では先ず考えられない幸運なことです。カメラマンとしてのキャリアと実績を誇る田部富男さんならではの「水田の水鳥」の構図は、生態写真にして芸術作品といえるでしょう。
そして、誰もが合成写真と思ってしまう満月を背景にしたコウノトリの奇跡の一枚を撮影したのが、城陽環境PS会議の「城陽生き物ハンドブック」に触発されて野鳥撮影を始めた西尾長太郎さんです。地元・青谷梅林をメインフィールドに、これまで132種類の野鳥を撮影されている西尾さんには、今や調査グループの貴重な戦力として記録写真を担ってもらっています。やはり調査メンバーの鳥垣咲子さんから「コウノトリ発見!」の一報が入るや、すぐさま現場に駆け付けて後に標識リングが識別できる写真などを撮影され、公式記録として不可欠なマスコミ報道に貢献されています。
そして、継続調査も4週間目を迎える頃、夜間のネグラ搭もほぼ決まり、餌場とする田んぼも限られてきました。月明りでの夜間の観察中、もう30年も前に巨椋池干拓田のコミミズクの調査で夕陽を背景に撮影したものの、満月の背景はついぞ叶わなかったことを思い出しました。月に一度のチャンスも、曇り空の気象条件に併せて、対象が夜行性の野鳥では、当時のカメラの性能ではとても及ばないことは明白でした。
1月11日の満月の夜、地元の神事・日待講で抜けられない筆者、ここは西尾さんに緊急指令です。前々日は風が強く田んぼでネグラをとるも、搭の上なら可能性もあり、22時から翌2時頃までが角度的にもベストタイムと思われます。それでも、仰角の位置取りや距離感が困難であり、何より止まり位置と姿勢によってはシルエットも単なる不気味な黒い物体にしか映らないなどの悪条件が重なる中、クチバシをたたんで片脚立ちのコウノトリ特有の寝姿を見事に捉え、まさに注文通りのこれ以上ない奇跡の一枚が届けられました!
前回の報告では、城陽市に飛来したコウノトリが、一昨年5月に福井市の研究施設で誕生し、9月に放鳥された愛称「ひかりちゃん」と名付けられたメスであることが判明したことをお伝えしました。三重県や静岡県への飛来を経て、千葉県で冬越しをしていたことや、装着されているGPS発信機の記録から、12月15日付で城陽市に滞在していることが公表されている等々、コウノトリ報告第一弾は全国注視の希少鳥類の朗報発信でしたが、その後の追跡調査で得られる生息記録こそ未来につながる貴重な資料として求められています。
お正月の鏡餅もハート形にし、ひかりちゃんフィギュアに供えて願掛けです。(写真③) 平安神宮の調査で黄金のスッポンを引き揚げた時の縁起物グッズを添え、鶴亀揃い踏み?でナチュラリストの夢の後押しです。大晦日も寒風の中、日没から眠りにつくコウノトリを見守りました。(写真④) 元旦も日の出前から福鳥の初詣でに赴き、誰よりも早く目覚めたひかりちゃんに新年の挨拶をして、駆け付けた田部さんと一緒に記念撮影です。(写真⑤) やはりコウノトリが越冬し、繁殖が期待されている亀岡市にも視察にでかけ、飛び去るのではないかとの一抹の不安を抱きながらも、日々充実のライフワークで1月の調査を無事終えています。以下次号

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