【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
ナチュラリストの活動母体・城陽環境パートナーシップ会議では、ふるさとの生き物たちとその生息環境の保全を願う啓蒙活動の一環として、市民参加の自然観察会や研修会を開催しています。今年も2月恒例の古川流域・バードウォッチングで34種類を観察し、過去15年間での冬期生息鳥類・79種類の確認記録は、城陽市鳥類目録全209種類と共に胸を張れる郷土の環境資料であるとの誇りをもっています。
その城陽市の野鳥209種類目に登録されたのが、昨年12月半ばに飛来し、およそ考えられない環境下で厳冬期を過ごしたコウノトリで、縁起の良い優美な鳥であることに加え、標識足環とGPSの記録から個体識別や飛来経路も分かって、「ひかりちゃん」と親しまれて大きな話題となりました。当初より城陽環境PS会議の調査メンバーたちと見守り、古川バードウォッチングのアフターでコウノトリ観察会を予定していましたが、その日は和歌山市に飛び去った後で叶わずも、何と後日再び城陽市に舞い戻ったこともお伝えしてきました。
そして、世間ではコロナウイル騒動で混沌となった3月を迎え、筆者も自然観察会やイベントなどの中止や自粛で落ち着かない日々を過ごしてきました。4月に入って、繁殖期を迎えたケリの調査を脇坂英弥君と始めましたが、5月に12日間のケリの取材が組まれているNHKや、毎日放送からオファーがあったスッポン漁がボツにならないことを願っている昨今です。
暗いご時世、城陽環境PS会議でも5月10日の木津川自然観察会は中止とせざるを得ませんでしたが、6月27日に予定している「ひかりちゃんの城陽滞在記」の総括となるフォーラムが開催され、コウノトリの絵はがき増刷と「城陽生き物ハンドブックDVD改訂版」完成を披露し、再び城陽の地に飛来してくれる願いを届けたいものです。写真に続いて動画でも、願い通りの作品が届けられています!
「城陽コウノトリ物語・終章」と題した前々回、3月に入っても城陽市でコウノトリの目撃情報が届けられています。…との結びからひと月、桜の季節を迎えても尚、城陽市で信憑性の高いベテランバードウォッチャーからの報告が複数件寄せられています。前回の「ひかりちゃんへの想いが結ぶ人の環」の続編は、鳥類研究者としての原点を思い出させてくれたひかりちゃんたちコウノトリと、その同好の志から寄せられるたくさんの情報・朗報を紹介して瑞祥の福鳥からの夢のおすそ分け報告で厄災撃退祈願です。

◎フォトアルバム

2月11日の古川自然観察会で配布された野鳥観察ガイドブック(写真①左)は、表紙に富士鷹なすびさんのイラスト「城陽市の鳥・白鷺」が描かれ、野鳥カメラマンの山中十郎さんの写真で、これまでに古川流域で冬期に観察された全79種類の野鳥解説書となっています。もうひとつの観察会配布資料がコウノトリの記念絵はがきで、マスコミ報道効果もあって大好評を博し、50名もの観察会参加者で賑わいました。
これら山中さんの「飛翔」と共に田部富男さんの「水鏡」、西尾長太郎さんの「月影」の3点の絵はがき写真を用いて、「城陽エコパートナー通信」4月1日号(同右)で、「コウノトリひかりちゃん滞在記」と題して概要の報告もしています。これらに続く新作絵はがきも、「近鉄特急・しまかぜ」など当地の特性に富む秀作揃いですのでご期待下さい。
さて、前号で紹介した山中さん撮影の迫力ある飛翔時の足環の主は、3月7日に京都市右京区嵯峨野の広沢の池に飛来したコウノトリ(写真②)で、野鳥の宝庫として知られる広沢の池でも過去15年間に於いて上空通過確認に次いで二度目の記録となるものです。標識足環の右脚・黄赤、左脚・緑黒から、兵庫県豊岡市豊島の巣搭で2018年4月9日に生まれ、同6月19日に巣立った♂のJ0195であることが分かりました。
頼もしい山中十郎さん(写真③右)と共に、3月29日にはコウノトリの繁殖地候補とみなされている亀岡市に嶋田節子さん(同中)たちと赴きました。今年二度目の遠征となった鳥垣咲子さん(同左2)と松井優樹君も、遠くのコウノトリの姿に城陽市のひかりちゃん観察がいかに恵まれた環境にあるかを実感したことでしょう。新昨絵はがきの山中作品も、大迫力の飛翔写真で即決です。(写真④)
飼育繁殖施設生まれのひかりちゃんに装着されたGPS機能こそありませんが、それだけに個体識別されて飛来が実証されるコウノトリの観察記録がどれだけ価値のある資料となり得るか想像がつくことでしょう。繁殖期を迎えたコウノトリが育雛に不可欠な餌場を確保し、あぶれた個体や繁殖年齢に達しない若鳥たちが移動を余儀なくされ、安全で餌が豊富な土地を見つけて定着し、やがては繁殖に至る構図が見えてきます。つい先日も、鳥取市の電波搭で昨年生まれた雄のコウノトリが中国で確認されたとのニュースが発信されています。
目撃情報さえ重要な記録のコウノトリ。今も届く地元情報も、願わくば実証の記録写真に標識足環の確認、そして行動の観察記録も生態解明につながる貴重な記録になり得ます。近鉄特急通過も高架で休憩するコウノトリの構図は説明も不要です。(写真⑤) 採餌とは明らかに異なるワラくずをくわえた一連のしぐさは、3歳で繁殖年齢を迎えるひかりちゃんの本能の目覚め・巣材運びの予鈴でしょう。(写真⑥) コウノトリ観察が縁で、これら貴重な写真をご提供いただいた田中義則さん(写真⑦右)は、早速、城陽環境PS会議にスカウトして調査メンバーに登録です。
そして、最も欲しかった記録のひとつに、タウナギ捕食のカットがありました。そんな貴重な瞬間をとらえた写真があると教えられ、撮影者の澤江里惠子さんから提供を受けたのは、願ったり叶ったりの動画でした!(写真⑧) 「城陽生き物ハンドブックDVD改訂版」で、唯一無二?のお宝映像の公開です。ご期待下さい。

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