【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

野鳥の繁殖期真っただ中、今年も5月10日からの愛鳥週間を迎えました。
例年ならバードウォッチングや野鳥イベントでテンションも上がりっぱなしのこの季節、今年は新型コロナウィルス感染拡大防止対策・外出自粛の発令で、寂しい限りのバードウィークを過ごしています。
振り返れば、特別天然記念物・ニホンカモシカによるヒノキ植林地の食害が問題となっていた当時、鈴鹿山系土山で調査と防除作業で共に汗を流した自然保護活動の仲間から、地元の巨椋池干拓田が「野鳥の宝庫」と聞いたのがバードウォッチングを始めるきっかけで1982年のことでした。それまでの自然保護団体の観察会や自然観察指導員のイベントに、野鳥の会にも入会してライフワークに探鳥会が加わりました。
以後、5月の愛鳥月間のバードウォッチングは年中行事となり、野鳥保護の啓発の場となる探鳥会の開催は鳥人ナチュラリストの使命です。やはり野鳥保護に欠かせない渡りや繁殖・越冬などの生態究明の手段である鳥類標識調査も取り入れ、たくさんの人たちに特筆すべき幸運な数々の発見の現認者となっていただき、理解と支援の環が拡がったことは何よりの成果でした。
実に37年目にして継続記録が途絶えた愛鳥週間・バードウォッチング、これまでの記録を想い起しては平穏無事な日常のありがたさを実感しています。寂しい限りのバードウィークといえど、オオタカにチョウゲンボウにカワセミ、雛鳥を連れたケリにカルガモ、心地よいイソヒヨドリのさえずりに、暗い世相も忘れる五月晴れのフィールド探査・2時間限定を楽しんでいます。
さて、外出自粛が続く中、写真で綴る「野鳥ギャラリー」でせめてもの愛鳥月間を体感していただくべく話題の鳥たちを紹介致します。本紙の愛鳥週間の野鳥情報で報じていただいたシロハラ・ミゾゴイ・アリスイの公式記録に添える資料記事とトピックスをご覧ください。

◎野鳥ギャラリー

一昨年4月、世界に1000羽と言われる希少鳥類のミゾゴイ(写真①)が、城陽市青谷のくぬぎ村の監視カメラに写っていたことから、繁殖の可能性を探るべく冬場に何回か古巣調査を行いました。そうした昨年1月27日、鳥類標識調査を兼ねた研修会を実施し、冬鳥のシロハラ(写真②)に脇坂英弥君(写真③右3)が環境省の標識足環・5B72958を装着して放鳥しました。初めて迎えた餌が乏しい冬期を城陽の地で過ごしたシロハラの若鳥は、春を迎えて繁殖地のシベリアに帰っていったことでしょう。
そして今年、くぬぎ村の監視カメラに足環の付いたシロハラが収められたと管理者の田部富男さん(同右2)から報告を受け、越冬地へのリターン記録を実証する映像資料を得ました。(写真④⑤) 更には、ミゾゴイの映像の中に2羽が写り込んでいるのを再発見し、再び世界的な大珍鳥の記録の掘り起こしで今シーズンの嬉しい課題が増えました。(写真⑥)
竪穴式住居をシンボルとするくぬぎ村では、ムササビやアオバズク・アオゲラなどを対象とした万能巣箱を設置する予定も、コロナウィルス騒動でとん挫し、実にはがゆい想いをしていました。そんな中、隣接する青谷梅林をフィールドに野鳥撮影されている西尾長太郎さんから、今年のコウノトリ・ひかりちゃんに続く135種類目ゲット!の報告は、京都府の準絶滅危惧種の珍鳥・アリスイでした。(写真⑦)
城陽市教育委員会・体育振興課主催の自然観察会に於いて、当時「日本動物植物専門学院」の学生だった脇坂英弥君と、木津川河川敷で京都府初となるアリスイ標識の記録がよみがえります。自身、木津川フィールドにおける標識100種類目の思い出深いメモリーバード、キツツキの仲間・アリスイの朗報でした。
これら郷土の環境資料としても大きな意義を有する野鳥たちの詳細記録とエピソードは尽きませんが、繁殖最盛期の愛鳥月間・5月、生態系の頂点に位置する猛禽類、オオタカにチョウゲンボウ・ハヤブサ(写真⑧⑨⑩)、フクロウ(写真⑪)・アオバズクたちの繁殖を見守り、生息状況の把握が緊急課題のタマシギ・コアジサシ(写真⑫)に紙面を譲ります。フィールドの夢を追いかけ続けるロートルナチュラリスト、野鳥写真家の盟友・山中十郎さんの作品に力をもらって頑張っています。

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