「暗夜の奇祭」で知られる県祭(あがたまつり)の神事が5日、宇治市内で営まれた。今年は新型コロナウイルスの影響で、祭のハイライトを飾る梵天(ぼんてん)渡御や露店の出店が中止に。華やいだ祭ムードとは違った「居祭(いまつり)」で、関係者らは静かに新型コロナの早期終息を願った。
県祭は木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)を祭神とする県神社の大祭として江戸時代に始まったとされる。中止になるのは、新型インフルエンザの影響を受けた2009年以来。
例年は多くの人々でにぎわう5日、祭のシンボルとなる梵天が奉納されている宇治蓮華の県神社、宇治壱番の宇治神社御旅所では居祭神事が厳かに執り行われた。

花房宮司のみで粛々と行われた「幣渡祭」(宇治神社御旅所)

宇治神社御旅所では午前10時から、花房義久宮司が本殿で「幣渡祭(へいとさい)」を営んだ。同神社のご神体から御霊を移した唐櫃(からびつ)や、梵天を前に祝詞を上げた。
感染拡大防止のため、1人で神事を挙行した花房宮司は「今年は残念ながら居祭での奉仕となったが、一日も早いコロナの終息を祈願した」と話した。

 

関係者が集まって執り行われた「夕御饌の儀」(県神社)

一方、県神社では午前10時から「朝御饌(あさみけ)の儀」が営まれた。
午後5時からの「夕御饌(ゆうみけ)の儀」では、同神社総代や後援会「木の花会」、梵天渡御実行委員会、梵天講などの代表者ら約10人が参列した。
本殿で田鍬到一宮司が祝詞をあげた後、参列者が順に神前に玉串を捧げた。
今年は、新型コロナ対策で舞楽の奉納を取り止めたほか、神事終了後の直会(なおらい)も見合わせた。
田鍬宮司は「梵天渡御もなく残念。『自粛』で異例の祭となったが、皆さんの協力で滞りなくできた」と感慨深げに語った