阪神・淡路大震災以来の「震度5」を記録した大阪北部地震(2018年6月18日)が発生してから間もなく2年となる。コロナ禍の今年、万一地震の被害が重なれば、過密になった避難所で感染が広がる「複合災害」の心配がある。多くの自治体で奨励している「自宅避難」は、災害対策として有効な手立ての一つといえる。
地震は、台風や大雨による洪水に比べて予想が難しく、短時間で広範囲に被害が及ぶ。宇治市「くらしの便利帳」には、揺れ直後の対応として、火の始末、ドアや窓を開放し逃げ道確保、必需品の準備を挙げ、家屋倒壊などのおそれがあれば避難し、ブロック塀には近寄らないなどのアドバイスを載せている。
震度の分布図では、関東から九州の太平洋沿岸を襲う南海トラフ地震と、宇治市域に最も大きな被害をもたらすとされる生駒断層帯地震で「震度5以上」、特に市内西部の低地では「震度6以上」を予想、加えて、建物ごと倒れやすくなる「液状化現象」の危険を指摘している。
「緊急避難所」については小中学校を中心に市内31カ所を指定。収容人数は施設分が5万9900人、空地分が14万8320人となっているが、新型コロナの影響を考えると、密集状態になることは避けられない。
新型コロナ感染症への警戒が強まった3月以降、宇治市危機管理室では、防災出前講座などの実施を取り止めている。大人数が集まる避難訓練も各地で休止が続いており、今後ますます「自主防災」の意識が必要になる。
「避難とは、避難所へ行くことではなくて、難を避ける行動のこと」と語るのは、槇島東地区防災対策会議で幹事を務める西山正一さん。同会議では、今年1~2月に開いた防災ワークショップで「震度5強」を基準として安否確認、救出活動に入る…と定めている。
懸念される複合災害に対し、西山さんは「分散避難」を提案。いわゆる3密(密閉・密集・密接)を避けるため、地域の集会所や旅館をサブ避難所として運営し、緊急時は農協や寺、駐車場での車中泊なども検討する方が良いとした。
また、避難所での心得として、発熱・せきの症状がある人のために、一般被災者と導線を分けること、専用スペース・トイレを確保すること、1人当たりのスペースを拡大すること(畳1畳に1人)や、対面による接触を避けるため、食事は置き場所まで各自が取りに行く形にすることなどを挙げた。
自宅(在宅)避難を行う際には、市が配布している「安否確認ボード」などを活用することで、消防が救助現場までたどり着きやすくなり、迅速な支援が見込まれる。コロナの状況下では、ボランティアが集まると密状態となり、人員確保に時間がかかることも考えられるので、避難生活が長引くことも覚悟しなくてはならない。
西山さんは「家族で1日、電気・ガス・水道・電話を使わないで過ごす避難体験を行ってみては。そこから必要品の確認ができる。野外でのキャンプも役に立つだろう」と話した。