中国国内で第三者による「宇治」の商標登録・出願が横行し、茶産業への影響が出ている中、中国の国家知識産権局(旧・知財局)が「『宇治』は日本の有名な都市であり、日本の有名な抹茶産地」と初めて認定していたことが分かった。中国企業が持つ商標『宇治小山園』に対して、㈱丸久小山園(宇治市)が無効を求め、国家知識産権局が「無効」と裁定した際、その理由の一つとしたもの。同社、府茶協同組合は「画期的な裁定」と口を揃え、商標権を巡る今後の争いへの大きな力を得た。
日本国内の地名等の商標が、中国で第三者によって出願・登録されるケースが相次ぎ、府茶協同組合の依頼を受けた㈱福寿園(木津川市)が2010年、茶を含む第30類の「宇治」の商標登録を取得し、府内業者は自由に使えるようにしていた。
しかし、昨年7月に、輸出が事実上できない状況にもかかわらず、「使用実績がない」として取り消された。その間に関係のない中国企業が「宇治」を出願。福寿園が商標取消に対して異議を申し立てている。
17年には中国企業が「京都宇治」を商標登録。府茶協同組合が無効審査請求を行っている。
由々しき事態に対処するため、昨年11月に自民党茶業振興議員連盟が『日本茶にかかる知的財産戦略ワーキングチーム』を立ち上げ、地元選出の安藤裕衆院議員が事務局長に就任。府、府茶協同組合、市が訪中し、国家知識産権局に「宇治が抹茶の産地として有名な地名である」ことを訴えてきた。
一方、中国浙江省の企業が持つ商標『宇治小山園』に対して、㈱丸久小山園が無効を求め、3年にわたる紛争が繰り広げられてきた。同社によると、国家知識産権局は同社商標のロゴマークと近似商標であることに加え、「『宇治』は日本の有名な都市であり、日本の有名な抹茶産地」とし、中国企業の商標「無効」と裁定。国家知識産権局は「中国商標法で『一般公衆に知られている外国の地名は商標として登録できない』と規定違反を認定したという。
同社は「中国で、初めて『宇治』が抹茶の産地として認められた画期的な裁定。府茶協同組合、府、市、自民党茶業振興議員連盟などのサポートのおかげ。今後は、出願されても拒絶される可能性が高くなった」と話した。
府茶協同組合も「画期的な裁定。国家知識産権局で認識が高まっているが、まだ理由の2つ目であり、もう一段階上げる必要がある。『京都宇治』の無効審査請求にも今回の裁定を活用するほか、同じ問題で悩む他の組合員にも紹介している」と述べた。