【第311号】緊急事態解除!フィールドからの朗報発信♪

B!

【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

ようやくコロナウィルス騒動の呪縛から解き放たれ、ナチュラリストの日常が戻りつつある昨今、梅雨空さえも意に介さず楽しいフィールド探査に明け暮れています。
緊急事態宣言下にあって、活動母体「城陽環境パートナーシップ会議」主催の自然観察会やフォーラムなどのイベントの中止決定は、ふるさとの生き物とその生息環境保全の啓蒙活動をライフワークとするナチュラリストにとっては陸に上がった河童状態でした。もうひとつのライフワーク・フィールド探査でも、ステイホームの制約で外出自体がはばかられ、ましてや調査仲間さえ同行できない単独・時短の活動には自ずと限りがあり、その地の情報提供などでお世話になっている人たちの元にも気軽に立ち寄れない状況には調査意欲も半減です。
そうして迎えた緊急事態宣言解除。早速、週末にはジュニアメンバーの優樹君を駆り出してスッポンをゲットし、脇坂英弥君とはケリの標識調査再スタートです。ようやく大手を振って活動できる喜びに、希少猛禽類繁殖の朗報が重なり、城陽環境PS会議の調査メンバーたちも久々に勢ぞろいです。そして、京都大学の森哲先生から協力要請があったイシガメ研究の大学院生を迎え、マスコミ報道がきっかけで弟子入り志願の小学生たちに30代と50歳のオジサンまで、生き物大好き仲間たちとがぜん楽しいフィールド活動で盛夏を迎えられそうです。
城陽市のお宝生物・チョウゲンボウの巣立ちを見届け、京都府の条例で希少野生生物に指定のタマシギにコアジサシ、オオタカの調査に奔走し、和束町の生き物調査と木津川のスッポン漁で深い眠りから覚めた思いの充実した毎日を過ごしています。今年も、傷だらけの足を自慢しだしたフィールド派ナチュラリストの、生き物讃歌四方山話・鳥類編のフォトレポートにお付き合い下さい。

◎楽しい調査仲間たちと

「城陽生き物ハンドブック2014」で、前年の2013年7月に城陽市の古川沿いの工場で希少猛禽類・チョウゲンボウの子育てを確認し、京都府2例目となる繁殖記録を報告しています。かつて冬鳥だったチョウゲンボウが繁殖期にも見られるようになり、文化パルク城陽で子育てしているとの情報を得て、当時の洛南タイムスと城南新報の記者を伴って最上階の屋根裏に登って調査したのはもう20年近くも前のことでした。この時はスズメなどを捕食していた餌場を見誤ったもので、関西初の大記録を逃した思い出がよみがえります。
それまで、ハヤブサの仲間の希少猛禽類とはいえ、京都府のレッドデータブック・準絶滅危惧種に掲載されていたチョウゲンボウですが、一年中生息する留鳥として繁殖が確認されたことにより、2015年度には絶滅危惧種にランクアップされています。関西初の繁殖記録は大阪の万博公園に譲り、京都府でもJR二条駅でのまさかの営巣に後塵を拝した城陽市のチョウゲンボウですが、ふるさとを代表するお宝生物のひとつには違いありません。(写真①チョウゲンボウのペア・右♂ 山中十郎氏撮影)(写真②綿毛の雛鳥)
今回のチョウゲンボウの営巣を発見したのは、コウノトリ・ひかりちゃんの時にも第一発見者として通報をいただいた鳥垣咲子さん(写真③中)で、古川流域を主要フィールドとして鳥類調査を続けられています。ムラサキサギの発見に希少水鳥たちの確認記録など、貴重な人材を城陽環境PS会議に招き、脇坂英弥君の鳥類研究のお手伝いを願っています。
5月31日のこの日、城陽環境PS会議が誇る自慢の鳥類調査員たちが集って巣立ちに向けての見守り協議をしました。(写真④) 巣立ちに失敗して落ちた場合、車やカラス・ネコなどからの保護とその後の対処など、地権者や周囲の人たちの理解と法的な問題もあります。傷病鳥獣の緊急避難的処置として筆者が携わることにはなりますが、希少猛禽類に環境省の標識足環を装着できればこれほど貴重な成果はありません。アドバイザーの鳥類学者・脇坂英弥君も平日から時間を割いてもらって待機し、標識の時に備えました。(写真⑤)
今度ばかりは関西初?となるチョウゲンボウへの標識調査も、今年度は準備期間も少なく来年度の課題に持ち越し、巣立ちの状況を見守りました。6月6日には4羽の雛鳥すべてが無事に巣立ち、夜には巣をねぐらしていた若鳥も、8日の夜を最後に戻ることなく巣立っています。子育て中、ペアとは別に若い雄が巣の雛鳥に餌を与え、こうしたペルパーの存在が知られているか現在検索中です。(写真⑥田部富男氏撮影)
チョウゲンボウの巣立ちを共に確認した脇坂君とは、今年最後となるケリの標識調査に赴き、別の夜にはタマシギの鳴き声・聴き取り調査に将来が楽しみなジュニア調査員の福井惇一君も参戦です。(写真⑦⑧) 札幌大学時代の親友・田部淳君とのン年ぶりの再会も、先ずはバードウォッチングに強制連行です。(写真⑨)
まだまだ話題が尽きない鳥たちに、ヘビ・カメ・スッポンにカエルや魚たち…。やっとナチュラリストの本分とする活動報告ができるようになりました。矢継ぎ早の続編をお楽しみに。

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