名門復活に「導くを知る」/同志社大ラグビー部員
「幸せとは何か」と派遣先のインドで考えを深めた

独立行政法人国際協力機構(JICA)の海外協力隊として2~3月の1カ月間、インドで青少年の指導に当たった同志社大学体育会ラグビー部員8人が19日、オンラインで帰国報告を行った。出発前、選手たちを励ました上村崇京田辺市長も市役所から参加し、3・4年生の選手たちが感じた現地の息吹きと様々な思い、得られたものに触れ、「必ずやこの経験が生きる。人に教えることはスキルアップにつながる」と、平尾、大八木らビッグネームが縦横無尽にフィールドを駆けた華やかなりし黄金時代よもう一度―とばかり、同大ラグビー〝復権〟へ今一度、背中を押した。
1986年から京田辺市にキャンパスを構える同志社大学とJICA関西は2019年、インドのラグビー発展と、それを通じた青少年の健全育成を目指す「JICA海外協力隊派遣に関する大学連携」を結んだ。その一環として、同大ラグビー部の8選手は、今年2月17日~3月17日までの1カ月間、海外協力隊としてインドラグビーフットボール連盟に派遣され、現地の青少年を指導。ラグビーの普及に努めた。
選手たちは出発前、京田辺市役所を訪れ、上村市長に決意表明し、和やかに歓談。コロナ禍でオンライン開催となった帰国報告会には、上村市長も表敬時にプレゼントされた紺とグレーの横縞ジャージを身に付け、熱い視線をスクリーンに送った。

モニター越し選手たちにメッセージを送る上村市長

選手をはじめ、大学、JICA関係者らが、オンライン会議アプリを通じて顔を合わせ、同大の藤澤義彦副学長とJICA青年海外協力隊の小林広幸事務局長が開会挨拶。チャットボックスを利用して質問や感想を自由に書き込めるスタイルに最大瞬間165人が参加する中、8選手が順次、モニターを通して登場し、写真を映し出しながら、活動を振り返った。
同大政策学部の川井圭司教授は「学内外の協力が結集した奇跡のプロジェクト」と前振りし、鈴木克弥選手は、出発前の取り組みを紹介し、上村市長を訪問した際に「決意と緊張感が高まった」と挨拶。他のゼミ学生と研修を行い、関空から9時間の空路でデリーに到着するやJICA事務所や大使館、邦人企業を訪ねたことも伝えた。
斉藤響選手は、デリーにある3クラブとの交流に触れ、高速道路下の段ボールハウスなどでの貧困生活を見て、「愛をもって接してきてくれる相手に何ができるだろう。普及が生活水準の向上になれば」との思いを抱いた。
辻野慎太郎選手も青少年とのプレー交流を伝え、「ハンドリングのスキルが乏しく、それを中心に取り組んだ。目に見えて向上した。ラグビーの楽しさを感じてもらえた」と回顧。赤津駿選手は、成功例と改善点を分析し、「競争の要素を練習に取り入れることで、つまらなそう、から、目の色を替え、懸命に頑張った」と紹介。榊謙二郎選手は「海外の人と交流するにはその文化を知るのが大事」と強調し、舘本覚選手は「楽しむことの大切さ」、吉田治寛選手は「スポーツの可能性」、福島吏基選手は「幸せとは何か」と胸の内を明かしたほか、3カ月にわたって活動した加藤達也さんは「スポーツは、貧困や性などの社会問題を解決する力がある」と声を強めた。
学生の思いを受け、JICAインド事務所の上町透次長は「コロナ禍、奇跡のタイミングで実現できたことの意味は大きい」と述べ、上村市長は「水をはじめ、あらゆる環境が異なる。体験を自分の言葉で伝えてくれた。必ずや、この先、この経験が役に立つ。楕円形のボールを追えば世界各国でコミュニケーションが取れる。名門の復権へ、人に教えることでスキルアップしたと思う」と、今後に期待を寄せた。