噛むほどに味わい深く/京田辺「一休寺納豆」
発酵させた大豆を桶に移し、日に当てながら混ぜる

一休禅師が製法を伝え、広く作られるようになった「一休寺納豆」の製造がこの夏も佳境を迎えている。
子どもたちに親しまれた昭和アニメのモデル・一休宗純禅師が「酬恩庵」と命名し、晩年を過ごした一休寺=京田辺市薪里ノ内=。応仁の乱で飢えた人々に作り方を伝え、先々で少しずつ独自の展開を遂げ、現在に伝わっている。
同寺では、蒸した大豆に「はったい粉」と麹(こうじ)を混ぜて発酵させ、塩湯と共に桶に移し約1年間、天日干しと撹拌(かくはん)を繰り返す。完全に水分が飛べば、真っ黒な一休寺納豆が完成する。
「発酵の温度調整が大事」と強調する田邊宗一住職(71)は40年間にわたり一休寺納豆作りに携わって、天候の変化が激しい近年も、梅雨空の模様や気温、湿度の変化をよく注視し、7月中に桶投入を終える。
古来、肉食をしない禅僧にとって貴重なたんぱく源となり、保存食として珍重。塩味の利いた独特の風味は、噛めば噛むほど深い味わいを楽しむことができる。
また、今年は滋賀と宮崎の農家による有機栽培の大豆を使用。いよいよ梅雨明けが近い27日、桶に移したばかりの半製品を田邊住職がゆっくりとかき上げれば忽ち強い香りが一面に放たれた。
同寺では、善哉に添え、ソフトクリームにまぶすほか、洋食店などと取引が増える。家庭でも、つまみやご飯のお供、隠し味に最適だ。